「研修制度変えるだけで医師不足解決しない」 新人医師研修見直しでシンポ
政府が来年度からの見直しを予定している、新人医師の臨床研修制度について考えるシンポジウム(主催・地域医療の再生を求める医師・医学生の署名京都呼びかけ人共同代表)が5日、京都市下京区内で開かれ、医師や医学生、市民ら109人が参加。臨床研修のあり方や医療崩壊の打開に向けて意見を交わしました。
見直し案では、都道府県ごとに研修医の募集定員に上限を設定。厚生労働省の試算では、京都府で約3割減となるなど大都市部のある5府県で研修医が削減されることになります。
厚生労働省の「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」の委員を務めた聖路加国際病院院長の福井次矢氏は基調講演で、04年から導入された現行制度の下で、旧制度時に比べて研修医の臨床能力は著しく向上しているとのべ、「現在の臨床研修制度が『医師不足』の元凶であるかのように言われているが、医師不足の要因は複合的なものであり、研修制度だけ変えても効果はない」と指摘。医師不足対策として、資格制度を設けるなどして総合診療を担う医師を増やすことを提起しました。
シンポでは、医学生、研修医、指導医、大学病院・一般病院の医師らがそれぞれの立場から研修制度や医師不足について発言。「医師のキャリアパスを考える医学生の会」の山口廣子さん(大阪大学5回生)は、都道府県ごとの上限枠は撤廃してほしいとのべ、「医師不足の地域に強制的に配置されても即戦力にならない。医師人生を左右する臨床研修は教育の視点をもっと大事にしてほしい」とのべました。
指導医を務める京都民医連中央病院副院長の高木幸夫氏は、研修内容について、「専門だけでなくまるごと診てくれる医師像が求められている。医療崩壊を食い止めるためにも、小さな病院で外来や当直、救急をこなす力が必要になってくる。都市部と地方が協力して交換研修を行なってはどうか」と投げかけました。
洛和会音羽病院院長の松村理司氏は、医師が少なくなった内科や外科の診療を応援したり、姉妹病院に医師を派遣するなど同病院総合診療科のフットワークの良さを強調し、「200床以下の病院なら総合医が力を発揮する。専門医をもっと少数精鋭にし、質の高い病院総合医や家庭医を多くつくることが病院崩壊を救う」と訴えました。