山ノ内浄水場跡地の高さ規制緩和を考える─西村よしみ
右京区山ノ内にある京都市の山ノ内浄水場は、2013年3月で廃止が決まっていて、大学を中心とした誘致のため、今月から大学選定作業が始まっています。
この場所は工業地域で、建物は20メートルの高さ規制がありますが、規制を緩和して31メートルまで建物が建てられるように市の「跡地活用方針検討委員会」が決めました。
なぜ京都市はこの場所を高さ規制を緩和するのか。地下鉄は、巨額の建設費をかけて2008年1月に地下鉄東西線天神川駅が開通しましたが、事業会計は膨大な赤字を抱え「経営健全化団体」となり、京都市は厳しい対策を迫られています。
一方、市内の浄水場は、近年の節水やペットボトル普及などにより需要が減り、山ノ内浄水場を廃止しても水道水はまかなえるとして廃止を決め、跡地に集客施設の誘致をして地下鉄など経済効果を狙ったものです。浄水場跡地を活用するため、主に大学を誘致することにしました。
京都市は、今の高さ規制を緩和して誘致する大学が、建物を31メートルまで建てることができるように決めてしまったのです。
しかし、「なぜ大学ならば高さ規制の緩和をしてもいいのか」「せっかく市民的議論で景観条例を施行したのに京都市自ら変えていいのか」と、疑問の声が広がりつつあります。愛宕山や高雄、宇多野、御室の低い稜線の山々が三条通りから見えて、緑の景観が市民を和ませています。
条例で決めた規制が、「大学、文化、にぎわい、経済効果」と、後だしの理由で、簡単に変えられてしまうのであれば、「行政の横暴ではないか」との意見も聞かれます。高さ規制を緩和する京都市都市計画審議会は、平成25年ころに予定しています。いまこそ市民的議論が必要です。