(49)「3年未満」なぜ?
非常勤の雇い止め権利濫用の疑い
各公立大学では、人件費削減目的で、ア有期雇用、イアルバイト・パート、ウ間接雇用(業務委託、派遣)など、多様な非正規雇用が導入されています。これは、既に多くの私立大学でも見られる状況です。
ご相談事例はアです。有期雇用は法的には「期間を定めた労働契約」による例外的なものです。本来、「期間の定めのない労働契約」による常用雇用が原則です。EU諸国では、(1)入口(有期雇用にできる事由限定)、(2)中間(平等待遇)、(3)出口(期間終了後の常用化)の3点から有期契約規制を加えています。
日本では労働基準法14条が契約期間について定めていますが、(1)、(2)、(3)のいずれも明確ではありません。この欠陥につけ込む形で使用者側が、半年や1年といった期間の設定を労働者に合意させているのです。雇用不安定であるのに、「同一労働差別待遇」のうえ退職金支給もないなど問題の多い働かせ方です。
最高裁は東芝臨時工事件で、「契約を反復更新した臨時工を雇止めするには解雇と同様の理由が必要だ」と、(3)の出口規制の考え方を示しました(1974年7月22日)。「ほとんどの人が3年未満までしか契約されていない」のは、この判例を知ったうえで更新回数を抑える、きわめて悪質な労務管理のためだと思います。
業務が恒常的であるのに、数年の経験のある職員を辞めさせ、新たに未経験の人を採用することには「経営上の合理性」がありません。労働契約法は、合理的理由のない解雇は権利濫用で無効と明記しています(第16条)。この「非常勤」という形態は「業務上の合理性」がなく、同法16条違反の「濫用的解雇を予定した契約」だとして争う余地があると考えます。
有期雇用は女性が多く、結婚・出産退職や若年退職など違法な差別退職制が、事実上「復活」したものと考えられます。地方自治体や「良識の府」である大学自身が、不安定で差別的な雇用を広げているのは社会的な問題です。一人で悩まず、信頼できる労組を見つけて改善方法を探ることが重要です。(「週刊しんぶん京都民報」2009年10月25日付)