(51)教師は残業代なし?!
労基法の全面適用と「給特法」の見直しを
公立学校教員にも労働基準法が定める1日8時間制や時間外労働規制が適用されていました。ところが、「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(略称「給特法」)が1972年1月に施行されました。この給特法が、給料の4%相当の「教職調整額」を支給する代わりに、教員には時間外勤務手当と休日勤務手当を支給しないとしたために、教員には「残業代」が出ないことになったのです。
教員も原則として労働基準法の労働時間規制が適用されます。しかし、給特法では、残業は「公務のため臨時に必要な場合」(同法第33条3項)を根拠に命じるものとされ、一般の場合と違って36協定に基づく残業が予定されていません。給特法第6条は、正規の時間を超えて勤務させるのは、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限っており、教員の残業は「臨時に必要な例外」という建前となっています。
しかし、この法の建前と実態がかけ離れています。教員が長時間過密労働で身体を壊したり、過労死に至る事例が少なくありません。
2003年給特法改正では、政令基準は「教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がされなければならない」という規定が追加されました。文科省は、2006年7月│8月、教員の勤務実態調査を行い、時間外勤務が約80時間(残業約52時間、持ち帰り約28時間)と過労死認定基準に達していることを明らかにしましたが、具体的改善措置をとっていません。
全国各地で教員の長時間残業をめぐって裁判が提起されています。ただ、裁判所の判断は曖昧で、残業が自主的活動で「労働ではない」としたり、4%の「調整」範囲に含まれるなど、現状を肯定するものでした。
しかし、教員の就労実態はまだ一般には知られていません。実際の労働時間に基づいて規制する労働基準法の全面適用を求めて、教員自身がもっと大きく声をあげること、さらに「給特法」を抜本的に見直すことが必要です。(「週刊しんぶん京都民報」2009年11月29日付)