接客業をしていますが、残業が多くて困っています。残業代は支払われますが、上司から残業を指示されると断れる雰囲気がありません。残業を断る権利はあるのですか?(28歳、男性、京都市)

36協定の有無、内容、命令の根拠を確認

(77)残業断れる?イラスト・辻井タカヒロ

 労働基準法は、原則として、週40時間、1日8時間を労働時間の上限として法定しています(第32条)。この法定時間を超える残業は、人間らしい働き方に反するものであり、刑事罰(罰則)も予定されています。
 例外として、法定時間を超える残業は、法律が定める一定の手続きをとらないと命ずることができません。とくに、残業を指示されたときに、労働者は個人としてはなかなか断れないので、同法では、労働者の過半数を代表する者との協定がなければ、残業を命じられないとしています。
 つまり、使用者は、(1)事業場の過半数労働者代表と時間外労働協定(いわゆる「36(サブロク)協定」)を結び、(2)それを監督署に届出ること(第36条)、そして、(3)一定の割増賃金(25%以上。2010年4月からは、月60時間を超える時間外労働については、中小企業を除き50%以上)を支払うことが必要です。
 過半数労働者代表は、過半数を組織する労働組合か、それがないときには、民主的な選挙などの手続きによって過半数代表を選ぶ必要があります。
 36協定があるのか、また、その内容がどのようなものであるかを確認することが必要です。こうした要件を満たさずに、法定労働時間を超える残業を命ずることは許されません。
 また、就業規則や労働協約に残業命令についての根拠があるかも確認しておく必要があります。そうした残業に関連した規定上の根拠がないか、その範囲を超えた残業であれば断ることができます。
 長時間労働は労働者の私生活だけでなく、健康・生命をも破壊します。政府は、過労死認定で、週20時間、月80時間を超える残業を重視しています。
 本来、36協定を結ばなければ、使用者(会社)は残業を命じることができません。労働組合や職場の労働者は「36協定締結拒否」を対抗手段とすることができます。職場の労働者の間で、自らの生活と生命・健康を守り、残業をなくすために、真剣に話し合うことが重要です。(「週刊しんぶん京都民報」2011年2月6日付

わきた・しげる 1948年生まれ。龍谷大学教授。専門分野は労働法・社会保障法。