原発の危険真実を知るべき 曹洞宗大本山永平寺大田大穣監院に聞く
シンポ「原発を選ばないという生き方」開催を決定
正しい情報が隠される
─「永平寺禅を学ぶ会」から「シンポジウムを開催することで永平寺への風当たりが強くなるかもしれませんがどうでしょうか」と問われ、大田監院は「大事なことなのでぜひやって下さい」と決定されたそうですね。
大田 風当たりが強いことは原発に限らずあらゆる日常生活の中であります。交付金などの経済的な利益の面を強調し造られてきたことや、事故が起きたら周辺地域はどうなるかなどの実態を知らないと是か非かも含めて正しい判断はできません。開催を決断した1番大きい理由は、今まで知らされていなかった原発の負の側面を見て原発はどういうものか真実を知ってもらうということです。
私は戦時中に知らされていた全ての情報が国によって非常に操作されたものであることを、嫌というほど思い知らされました。とにかく情報や知識が無くては正しい判断を下せないということを骨身にしみて感じました。
正しい情報が隠されるという意味では戦争も原発も同じです。いろいろな権力とか政治の都合で抑えてしまうのです。そういう部分は看過できないというか許しがたいところです。
原発を進めていく上で影響があるから伏せるのでしょうね。情報を全て開示しないのは無闇に動揺を与えないためなどと言いますが、それは全ての情報が開示された後に国民が判断することで、それを電力会社や国などの原発を維持または推進したい一部の勢力が情報操作すべきではありません。
長崎原爆の体験から
─大田監院は17歳の時に長崎で原爆の光を見たそうですね。現在も長崎で60年超を経てもなお苦しむ被爆者と接しておられますが。
大田 今回の決断を下す上で、今までの体験がもちろん要素として働きました。私自身、原爆の光を見ましたし、すさまじいごう音を聞きました。また、市内から避難してくる人などの痛ましい惨状を目にしました。私が住職をしている長崎県では、普段は気丈に振舞っている方が、人がどろどろになっているのを見たなど、原爆の体験を語ったりします。
私の少年時代の経験と長崎で接している被ばく者の方との交流は、原発事故による悲劇を2度と繰り返してはならないという思いにおいてシンポ開催の決断に影響を与えています。
今後も同様の取り組みが計画されたらどうぞやって下さいと言うつもりです。(「週刊しんぶん京都民報」2011年11月20日付)
監院(かんにん) 大本山の貫首(住職)に次ぐ役職。同山の実質上の総監督者で、同山の運営に関する一切の職能を有しています。
曹洞宗 鎌倉時代の僧・道元(1200~1253年)が開祖。現在、寺数約15000、僧侶約25000人、檀信徒約800万人。大本山は永平寺(開山1244年)と總持寺(開山1321年=神奈川県横浜市)。