告発・京都市国保 〈5〉「本人の同意」の名目で 生活保護費から保険料請求
が分かりました。19政令市のうち、同市と同様の対応をしているのは2市だけ。憲法で保障された最低生活のための生活保護費から負担を求める京都市のやり方に、市民から批判の声が上がっています。
「食事を削るしかないのに」
「未払いの保険料が5万円ありますね。生活保護を受給しても、納入義務はありますよ。生活保護費から少しずつでも払えませんか」
区役所保険年金課。職員が、生活保護受給が決まったため、窓口を訪れた60代の男性に説明をしていました。
職員はこう嘆きます。
「市の方針だから、保険料のことを言わなきゃならないんです。生活保護費から、家賃や水光熱費を払ったら残るのは、月6万円位。保険料を払うためには、食費を削ってもらうしかないのに…」
生活保護受給者は医療費の自己負担がなく、保険料の納付も不要です。受給開始前の滞納分についても、生活保護費の差し押さえや天引きなどの強制徴収を禁じています。ただし、「本人の同意」による滞納分の納付には規定がありません。
厚生労働省(保険局国民健康保険課)は、「国保を運営する市町村が決めること。国が指導する問題ではない」としています。そのため、市町村によって対応は分かれています。
政令市の中でも異常に
京都市では、国保の資格喪失手続きなどの際に「滞納分は納入義務がある」と説明。口頭で支払いを求めたり、督促状の送付をしています。
9日。市議会教育福祉委員会。蔵田共子、加藤あい両議員がこの問題を追及したのに対して、市は「本人の同意に基づき納付してもらっている。問題ない」と主張しました。
しかし、政令市のうち、同市と同じ扱いをしているのは、神戸市と名古屋市だけ。10市は、準用する地方税法(15条の7第1項第2号)にもとづき、滞納処分の執行を停止。6市は、条例に基づき滞納保険料を免除しています(表)。福岡市では、各区役所の窓口に、「免除」になることを知らせるリーフレットを置いて、市民にPRをしています。
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職員「市長の決断ひとつ」
また、保険料の受け取りについて、岡山市や川崎市などは「本人の同意があったとしても、生活保護費から保険料は受け取ることはできない。断っている」と言います。
生活保護費から保険料を納付している世帯数について、京都市の担当課は「督促状をほかの滞納世帯と区別せず一律に送っている。数は把握していない」と説明します。
別の担当職員は、「うちの区で、該当者は10数世帯ぐらいではないか」と言います。
「でも、数の問題ではない。多くの職員は、生活保護費から納付を求めることに疑問を持っています。他都市と同じ扱いに一刻も早くしてほしい。市長の決断ひとつ」
全京都生活と健康を守る会連合会の大本義雄事務局長は、市のやり方を「徴収ありき」と厳しく批判し、こう訴えます。
「生活が厳しく生活保護を申請せざるを得ない相談が急増しています。市のやるべきことは、最低生活費で生活している保護世帯からの保険料の督促は直ぐに止めて、生活を守ることです」
生活保護法の趣旨に合わぬ
[花園大学教授吉永純さん] 生活保護費は、その人の最低生活を保障するための金銭であることから、税金や社会保険料などを徴収することは禁止(生活保護法57条)され、差し押さえも禁止(同法58条)されています。
生活保護受給者に滞納保険料の督促状を送付したり「保険料の納入義務がある」と説明することは、同法の趣旨にそぐわないものです。他都市で行っているような、滞納処分の執行停止や滞納分を免除することが求められています。
また、市は「納付は本人の意思に基づくもの」と言っていますが、そのためには法の趣旨を十分に説明しなくてはなりません。その上で、受給者が「借金は嫌だから」と任意に返されることまで、法は禁止していませんが、生活保護費から滞納保険料を受け取らないことが望ましいことに変わりはありません。