「人体の不思議展」訴訟棄却 原告控訴の方向
特殊加工した標本人体を展示する「人体の不思議展」が自宅近くで開催され、精神的苦痛を受けたとして、京都工芸繊維大学の宗川吉汪名誉教授(72)=京都市左京区=が、主催者に慰謝料を求めた訴訟で、京都地裁(佐藤明裁判長)は16日、訴えを棄却しました。宗川氏は「非常に残念な結果。控訴する方向」としています。
「人体の不思議展」は、プラストミックと呼ばれる技術で加工された全身標本や臓器などを展示する企画展。2002年以降、海外をはじめ各地で開催され、京都では、左京区のみやこめっせで2010年12月~11年1月に催されました。開催中止を求める世論も強く、フランスでは、最高裁が開催の中止を命ずる判決を出しています。
宗川氏は「標本は死体。死体が商業的に展示されることで、死者に対する尊厳や倫理観を傷つけられた。展示に際して、主催者は死体解剖保存法が定める市長の許可を取っていない」と訴えました。
判決は、「展示により、原告の倫理観が傷つけられた」ことは認めたものの、「法律的に保護するまでの権利ではない」とし、展示の違法性については判断を避けました。
判決後の報告集会で、小笠原伸児弁護士は「訴訟したことで、主催者は今のところ展示を催しておらず、その意義は大きい。2度と開かせない取り組みが必要」と訴え。宗川氏は「死者を大切にしない社会は、人を大切にしない社会だ。控訴する方向で、支援のため結成された『京都ネットワーク』」と相談したい」と述べました。