京都会館検討委員会異例の「提言」の真相 石田潤一郎氏に聞く(2)
──「京都会館建物価値継承に係わる検討委員会」での議論の中身を教えて下さい。
石田 高さと景観問題が大論議となりました。岡崎一帯の建物の高さ規制は15メートルです。ところが、京都会館再整備基本計画では、建物を高さ約31メートル(現行27.5メートル)にするもので、景観への影響が市民的にも問題となっていました。
委員会では、そのことが一層明白となりました。同計画に基づくシミュレーション(図参照)を市が委員会で公開したからです。委員の求めでようやく提出されましたが、これを見たら多くの市民が驚くのではないでしょうか。
東山を借景に広がる岡崎地域に、高さにすれば8階建てマンションが屹立(きつりつ)しているイメージです。ボリュームも、最頂部が疏水側に現在よりも20メートルもせり出してくるので、相当あります。
なぜこれだけのものが必要か。市は、現在のホールの標準が、舞台の天井の高さ27㍍(現行12~15.5メートル)であり、これを下回ると使ってもらえないというのです。これまで、世界的オペラ誘致のためにもこの高さが必要と言ってきました。ところが、委員会では、改築の狙いが、ポピュラー音楽の巨大コンサートと大型のミュージカルにあると説明しました。
──これでは、大議論になるのも当然ですね。
石田 そうです。景観面の配慮が必要であるという意見が強く出されました。
例えば、道家駿太郎委員(日本建築家協会近畿支部京都会会長)は、京都の多くの建築家や設計者が京都の将来を考え、高さ制限を守る努力をしてきたことを強調し、再考を求めました。それでも、市がいう「舞台内の天井の高さ27メートル程度」という再整備基本計画をくつがえすにはいたりませんでした。
シミュレーションにしても、判断材料としては不十分だと私やほかの委員からも指摘がありました。
──こうした論議を踏まえ、どんな提言になったのでしょうか。
石田 市の諮問機関としては、相当踏み込んだ提言となりました。
このままの計画であれば、岡崎地域の風致に重大な影響を与えると指摘し、「高さとボリュームを抑えるべき」と提起しました。計画の根本にかかわる重要な内容です。
委員が提言の実行を強く迫ったことも大事です。中川理委員(京都工芸繊維大学教授)は「提言に従って設計案の検証が必要だ」と述べ、設計のやり直しを求めました。橋本功委員(前川建築設計事務所所長)も「提言を重く受け止めるべきだ」と指摘しました。
これに対して、平竹文化芸術担当局長文化市民局が「提言をより生かしていけるようにしていく」と答えたことも重要です。
また、提言では、精緻(せいち)な景観シミュレーションを行うことを求めました。私は、シミュレーションについては、少なくともやり直すべきだと考えます。その上で、ヨーロッパでは一般的に行われている様に、シミュレーションや設計模型、CGを市民に公開し、再度市民の意見を聞き直すべきだと思っています。(「週刊しんぶん京都民報」2012年5月27日付掲載)