秋の七草
万葉の歌人山上憶良は「萩が尾花(薄のこと)葛花なでしこが花 女郎花また藤袴朝顔(桔梗のこと)が花」と詠み、源氏物語「藤袴」巻に登場する夕霧が「おなじ野のつゆにやつるゝ藤袴」と詠むなど古い時代よりとても人気があった藤袴も、今では野生や自生の藤袴はまったく見られなくなって、わずかに植物園や愛好家による鉢植えなどにわずかに残るのみになりました。
藤袴はキク科フジバカマ属、学名はEupatorium fortunei。秋の七草の中で唯一外来帰化植物で原産は中国。日本には奈良時代に渡来しました。中国では「蘭」「香草」「香水蘭」「蘭草」など呼ばれていますが、「蘭」の文字はラン科植物にすり替えられたといわれています。また、「蘭」の漢字は、古来中国では香りの良い植物の総称として用いられていたようで、現代で言う蘭(ラン科植物)ではありません。葉を乾燥させると良い香り(桜の葉と同じクマリンという香気)が漂い、唐の時代には香草として重用され、日本でも平安時代には部屋の隅などに置いて香水のように重宝されました。フジバカマの仲間にはヒヨドリバナ、サワヒヨドリやマナヒヨドリなどがあります。鉢植えなどで市販されているフジバカマは別種や近縁種と言われています。
藤袴を原種から育てている、京都・深草ふれあい隊「竹と緑」のグループの北仲重郎さんは「4年前に地元の竹林保存に尽力されている竹林正治さんがはじめられて広がって、「深草 W-ingの風」が企画した事業です。原種から丹誠込めて育成したフジバカマです。昨年は160鉢でしたが今年は220鉢に増やし伏見深草地域の商店街、老人ホーム、稲荷大社や深草小学校の園芸コーナー(写真)などに20鉢ずつ届けて、水やりなどお願いして観て頂いて喜んでもらっています。嵯峨の水尾地域でも植生してますね」と笑顔で話します。(仲野良典)
「秋の野に匂ひて咲ける藤袴 折りておくらむその人なくも」(良寛)