大阪市立桜宮高校体罰問題で声明 自由法曹団
大阪市立桜宮高校の生徒が教員からの体罰を受けて自殺した問題で、自由法曹団常任幹事会は19日、大阪市と大阪市教委に対する声明を発表しました。
全文は次の通り。
橋下大阪市長は、大阪市立桜宮高校のバスケットボール部の男子生徒が顧問の教員から体罰を受けた翌日に自殺した問題で、市教委に対し同校のスポーツ関係学科の今春の入試を中止するよう求め、同校運動部の顧問教員全員の人事異動を求めた。そして、市教委がこれに従わない場合は、関連予算を支出しないとの強硬姿勢を示している。
言うまでもなく、学校現場、クラブ活動における体罰は、生徒の人権を無視した違法な行為であり、断じて許されるものではない。桜宮高校の体罰問題については、徹底した事実関係の調査と原因の究明を行うとともに、市教委と教職員、保護者、生徒が一丸となった再発防止策が講じられなければならない。この点で、市教委の果たすべき役割は重要である。
しかし、この問題に関する橋下大阪市長の一連の対応は、きわめて問題である。とりわけ、同校のスポーツ関係学科の入試の中止を求める発言は、受験生やその保護者に大きな混乱を与えている。同行のスポーツ関係学科の受験を目指して頑張ってきた中学生の希望を摘み取るものであり、教育を受ける権利を蔑ろにするものである。絶対に許されない不祥事を起こしたのは、顧問の教員の側であり、そのために、受験生が進路を諦めなければならないという道理はない。
また、顧問教員全員の人事異動などは、現実問題としてあり得ないが、十分な調査も未了のまま、問題のなかった顧問教員まで十把一絡げにして人事異動を求めると言うのは、同行の在校生の教育を受ける権利や、クラブ活動の指導を受ける権利をも不条理に奪い去るものである。
そもそも桜宮高校の入試の中止や、顧問教員全員の人事異動などの措置は、同校の体罰問題の解決にとって、何らの効果も発揮しない。橋下大阪市長は、かねてより、いじめ問題について、いじめた生徒を学外に放逐することによって解決を図ることを提案しているが、今般の一連の対応は、このような無思慮で、無責任な対応と軌を一にするものである。
橋下大阪市長は、桜宮高校の入試の中止を求める発言と、顧問教員全員の人事異動を求める発言を撤回し、予算の執行権限を振りかざした市教委への政治介入を直ちに止めるべきである。そして、公人でもある橋下大阪市長がこれまで体罰容認発言を繰り返してきた弊害を真摯に反省すべきである。
他方、市教委は、橋下大阪市長の政治介入に屈せず、受験生や生徒の教育を受ける権利を最大限に尊重して、桜宮高校スポーツ関係学科の今春の入試を実施する決断をし、徹底した事実調査と原因の究明を行い、教職員と生徒、保護者が一丸となって再発防止に取り組めるよう、尽力すべきである。