一面にかがやくレンゲ草
4月も中旬に入り気温も少し暖かくなってきた京都南部の小掠池干拓田の田圃にはレンゲ草が一面にかがやいています。周辺16キロメートル、約8平方キロメートルの京都府下最大の小掠池は、1933年(昭和8年)からの国営第1号の干拓事業で634ヘクタールの干拓田づくりと周辺の1260ヘクタールの既存耕地の改良も加わり、京都市伏見区と宇治市と久御山町にまたがる広大な干拓田が誕生しました。開拓田には野草が育ち、野鳥など飛び交うようになりました。5月になれば田圃は一面のレンゲ草が華やぎ、蝶や蜂が飛び交いました。しかし、小掠干拓田の周辺から徐々に住宅、学校などが建ち並ぶようになり、近年には京滋バイパスや第2京阪国道などが縦横するようになりました。一方、農家の田おこしや田植えもすべて機械化が進んでいますが、若者が跡を継がず、高齢化して人を雇っての田圃づくりや水田から畑化とビニールハウス化が進行しています。
田圃も以前はレンゲが一面に栽培され、日本の4月5月の原風景でしたが、今は化学肥料になってほとんど見られなくなりました。しかし、京滋バイパスと第2京阪と交差する久御山JCTの南東のあちこちの田圃には一面のレンゲがかがやいています(写真)。レンゲは(マメ科ゲンゲ属:学名Astragalus sinicus:中国原産で漢名のゲンゲは紫雲英、翹揺:和名のレンゲソウは蓮華草)マメ科
で、根っ子(根粒:レンゲは白いコブ状に)に根粒菌というバクテリアがすんでおり、この菌が空気中の窒素を取り入れて栄養分をつくる能力があります(レンゲと根粒菌とは共生関係)。田おこしの時にレンゲを地中にすき込むので土壌に窒素が取り入れられ、緑肥として土地改良にとても役だっているのです。
またレンゲはハチとも共生関係にあります。レンゲの花の構造・仕組みは面白く、ハチだけしか蜜をとることができず、ハチだけがレンゲの花粉を運ぶことができます。また、利尿、解熱などの薬草でもあります。化学肥料もやむを得ないかもしれませんが、レンゲが一面にかがやく4、5月の日本の風物詩はいつまでも残しておきたいです。(仲野良典)
「げんげ田や鋤くあとよりの浸り水」(臼田亜浪)
「ひらいたひらいた なんの花ひらいた れんげのはぁなひらいた ひらいたと思ったら いつの間にかつぅぼんだ」(古歌)