職員給与削減条例に抗議 府職労連が声明
京都府職員・教職員労働組合連合は17日、府が同日開かれた6月定例会に職員給与を削減する条例案を提案したしたことに対し、抗議声明を発表しました。声明の全文は以下の通り。
京都府職員・教職員の給与削減の一方的条例提案に抗議する
京都府当局は、6月13日に行われた府職連交渉において、大多数の職員による理解と納得が得られていないもとで、法的問題、地域経済への影響、財源問題をはじめさらに交渉を継続し議論を尽くすこと求めたにもかかわらず、国からの要請である7月からの削減をめざして6月議会提案を最優先させ、交渉を打ち切るという暴挙を行いました。
私たちは、1月以降くり返し地方公務員給与削減を行わないよう京都府知事に要請し、民間労働者との賃上げでの連帯や府民への宣伝などに全力をあげてきました。同時に交渉では、単に撤回を主張するだけでなく、地域経済振興にむけた京都府の公契約のあり方や給与削減に頼らない財源確保に向け職員の英知を集めることを提案、また当局が府債管理基金に今年3月例年の倍以上の267億円もの積み増しを行っていることも指摘し、その活用を行えば地域経済に甚大な影響を与える給与削減を行わなくても済むことも主張するなど、道理ある主張と提案を行ってきました。
私たちは、この歴史的な暴挙に憤りをもって抗議し、府議会における真摯な論議に期待するとともに、地方自治の根幹に関わる問題、地域経済や労働者の賃金に計り得ない影響を及ぼす問題として府民の皆さんにも明らかにし、議論をよびかけるものです。
給与削減を提案した当局が席を立ち府議会に一方的に提案するという事態は、京都府の労使交渉の歴史においてもかつてないものです。こうした暴挙の根源には、政府・総務省が違憲・違法な公務員・教職員給与の削減を7月からという期限も決め6月議会提案を半ば強要していることがあることは明らかです。全国の地方自治体に異常な混乱を持ち込んでいる政府の
責任を問い、地方自治への介入を中止することを強く求めます。
そして、政府の不当な地方自治への介入と対決する姿勢を求め、税源も含めた私たちの提案を拒否し、国の要請に唯々諾々と追随する大幅な給与削減提案を強行した京都府知事と当局に対し、強く抗議し議案の撤回を求めます。
京都府職員・教職員の給与削減は、次の重大な問題を持つものと考えます。
第一は、憲法、地方自治法、地方公務員法、地方交付税法、労働契約法に照らし重大な法的問題を持つものです。
今回の給与削減提案は、憲法が保障する労働基本権剥奪の代償措置としての人事委員会勧告にもとづかないものであり、しかも政府・総務省からの交付税制度をテコにした要請により行われた点で、労働基本権や地方自治を規定する憲法・地方公務員法に抵触するものである。また、交付にあたって条件をつけてはならないとする地方交付税法にも反し、さらに大幅な不利益変更という点でも労働契約法の趣旨と精神を違えるものであり、幾重にもわたる法違反の内容をもっています。
第二は、この問題は京都府当局が認めているとおり地方自治の根幹に関わるもので、国からの誤った要請は一度であっても受け入れるべきでなく、拒否すべきであり、現実に削減された交付税にどう対応するかは、本来地方自治体が自主的に決めるべきものです。政府の誤った要請をそのままうけいれる態度は、知事の地方分権への強い姿勢とは相いれないものです。
第三は、地域経済のみならず日本経済に深刻な影響を与えるものです。交渉で求めた直接的な影響額の試算は、107億円にのぼることが明らかになりました。知事自身も5月10日の記者会見で「本当に今給与をあげていかなければならない。そうしたなかで公務員給与の削減だけ今回、内閣の方で交付税を削ったのは遺憾」と述べられ、また、今年の3月15日、知事が京都市長らとともに京都の経済団体に対し「内需の拡大により本格的に景気を回復軌道に乗せることが必要で・・給与等の就労条件の改善を」と要請されており、これらの言動と、今回の給与削減提案は相反し、将来に禍根を残す誤った政策判断と言えます。
第四は、この間の職員の労苦にこたえるどころか、さらに犠牲を強いる姿勢です。平成12年から16年にかけ、私たちは昇給延伸や給与カットで400億円にのぼる財政再建に協力し、その後の給与費プログラムによる全国一の人員削減のもとで年間自殺者を5人生むという厳しい職場実態のなかで府政を支えてきました。当局自身も責務としているかつての給与カット等の職員1人あたり85万円の損失補てんこそ優先されるべきです。
第五は、府政や学校教育はマンパワーで成り立っており、人材確保に大きな支障を生じさせ、ひいては府民サービスを低下させかねないということです。特に病院職場では、医師、看護師不足が深刻な問題になっており、経営の死活問題にもなっています。こうしたことを背景に今春闘でも少なくない民間医療機関で職員の処遇改善に踏み切っています。給与削減提案は、府立病院の経営基盤をも揺るがしかねない大問題です。
第六は、京都府公立大学法人の運営交付金を削減することで人件費削減を法人に要請していることです。法的にも誤った政府からの要請を、さらに法人に要請することは2重に誤りを重ねることになるとともに、京都府当局のこの問題の担当である給与厚生課長が直接法人に減額を要請したことは労使自治への介入といえる問題です。
第七は、同様に行政委員の報酬を削減する内容も6月13日の交渉で初めて明らかにされました。行政委員報酬については、そもそも行政委員会で十分議論をされるべき性格のものであり、今回の政府の交付税減額算定額には含まれていません。行政委員報酬のいきなりの削減提案は内容とともに手続き的にも問題があると言えます。
第八は、当局が財源として提案した行政改革推進債について、民間委託やさらなる行革を前提とするもので、この点でも労使での議論が全くなされず提案されており、問題です。
第九は、若年層の削減緩和の財源として、管理職の削減率の引上げが提案されたことは、前回交渉の提案から後退したものであるとともに、職場に分断を持ち込み、管理職なら何でも犠牲を強いることができるという強権的な姿勢を示すものであり看過できるものではありません。
第十は、交渉の経過を踏まえれば、説明責任が果たされておらず、職員の理解と納得を得ていないということです。
10日に府職労が実施したアンケートでは、69%が提案を撤回すべきと回答しており、緩和すべきとの意見も含めれば8割が提案の撤回・見直しを求めています。職員が、今回の削減提案が、地方自治の根幹に関わるとともに、地域経済や職員の生活に重大な影響を及ぼすという点で、撤回を求めていることは明らかであり、この声に真摯に耳を傾けるべきです。
また、当局が最終交渉とした13日の交渉は、6日に全体像が示されたあと、初めての交渉であり、府職労が10日に提出した質問書に対する回答は交渉直前にあったばかりです。私たちが求めた職員の英知を集めての財源づくりや地域経済活性化策、医療技術者の確保問題、職員の努力に報いる問題などには、全く応えたものとなっていませんでした。
以上、多くの重大問題を持つ公務員給与削減を許さない闘いは、社会的大義をもった闘いです。府職連は、給与削減を許さないとりくみに全力をあげるとともに、交渉において問題提起した公契約条例や地域経済振興をはじめ府民の暮らしと営業を守るとりくみに全力をあげるものです。