カラスウリの花 立木や垣根にからみつく蔓草のカラスウリの真っ白の繊細なレースの広げたような神秘的なカラスウリの花が咲いています(実は2月4日付で紹介)。写真は白い花のレース部分が少し短いのと真昼に咲いているので、同じ仲間のキカラスウリの花と思われます。カラスウリと同じく、オシロイバナ、マツヨイグサ、ヨルガオやゲッカビジンなども夕方から夜にかけて花咲かせる一夜花なので、なかなか観ることができません。ところが、25日の真昼に山科花山あたりのフェンスに偶然に見つけ撮影しました。一日花は真昼か真夜中に咲くのですが何故か夏花が多いようです。
 カラスウリ(ウリ科カラスウリ属:Trichosanthes cucumeroides:同じ属のキカラスウリはT.kinlowii var japonica)は雌雄異株で別々の花。雌しべは花の中心に長い筒状をして一番奥に蜜があります。この蜜を摂るにはガの仲間のスズメガがストローのような長い口が便利なので、暗闇に真っ白花を広げる雄花と雌花の間を飛び回るスズメガだけということになります。しかも止まることがないので空中にホバリングしながら蜜を吸うようです。秋になるとWEBで紹介した写真のような真っ赤な実をぶら下げます。その種が独特でカマキリの顔のような形や、日本の古い時代では恋文の結び文に似ていたことから別名「玉梓(タマズサ=手紙のこと)」と言われて万葉集の各所に折り込まれています。
 一方、キカラスウリは同じく雌雄異種株や一夜花ですが、実は黄熟でカラスウリよりも大きい広楕円形です。調べてみると、地下にはカラスウリよりも大きい塊根がありこれから「天瓜粉(テンカフン)」と言うデンプン粉をつくりあせもに良く効くと言われています。
 少し寂しいですが、万葉の歌と文から。(仲野良典)
「玉梓の妹は花かもあしひきのこの山陰に撒けば失せぬる」
「さにつらふ 君がみ言と 玉梓の 使ひも来ねば 思ひ病む 我が身ひとつそ ちはやぶる」 (出典=岩波書店刊『新日本古典文学大系』)