白梅一輪春告げる
京の街もようやく厳冬を潜り抜けて暖かい春を迎えそうな今日この頃です。京都市東山区の高台寺境内の白梅もつぼみ付けた小枝の先に小さな白い花が一輪一輪と咲きはじめ、「春はそこに来ているよ」と告げているようです。清水寺から八坂神社までの小径の観光客も少なかった底冷え厳しい京都でしたが、これから大勢の観光客が訪れ賑わう季節を迎えます。
高台寺は臨済宗建仁寺派のお寺で、秀吉の妻であるねね(北政所:高台院)が秀吉の冥福を祈るため、家康の援助を受けて1606(慶長11)年に創建されました。高台寿聖禅寺は正式な寺号。創建当時は壮観を極めた建造物も度重なる火災などで失いましたが開山堂、霊屋、表門、観月台や茶室(傘亭、時雨亭)などは重要文化財指定で当時のまま残されています。室町時代の見事な漆工芸の蒔絵装飾を施した須弥壇や厨子や小堀遠州作と伝える池泉回遊式庭園などは見応えがあります。厳しかった冬から暖かな春を梅から迎え、3月下旬の満開の桜と続きます。同じように長かった冷たい府政を変えて、4月に暖かい桜を咲かせたいという思いを、八木重吉の詩を重ねて詠えばまたこころ暖まりますね。
写真の白梅(白加賀:シロカガ:Shirokagaと思われます)は大きな梅の木で拝観順路の入り口の前庭にあります。梅はサクラ属で落葉小高木で園芸種から果実種までいろいろな種があります。通常、花は2~3月、葉に先だって開き、白色・紅色・淡紅色、濃紅色などです。(仲野良典)
「梅一輪一輪ほどの暖かさ」(嵐雪)
「ひとつの気持をもっていて 暖かくなったので 梅の花がさいた その気持ちがそのままよい香いにもなるだろう」(八木重吉)