黄金に輝く恵心院のビヨウヤナギ
古くから観賞用として愛でられているビヨウヤナギが黄金(こがね)色の花をいっぱい咲かせています。写真は宇治川右岸にある恵心院に咲くビヨウヤナギです。ビヨウヤナギ(美容柳。未央柳、美女柳や金線海棠とも)は直径4センチ~6センチの大きな黄金色の美しい花を咲かせます。花弁は5個で30~40個の長い雄しべは王冠のようです。名前にヤナギがついているのは、対生の葉っぱが柳に似ていからとも言われているようですが、細長い柳の葉より楕円形で丸みがあってあまり似ていません。樹高1メートル程の低木で、オトギリソウ属。学名をHypericum chinense(ギリシャ語でhypoは「下」、eiriceは「草むら」。chinenseは「中国の」の意)で原産地は中国です。日本では庭木などに古くから植えられています。
ビヨウヤナギが花開く恵心院は、宇治の塔の島に架かる朝霧橋の袂から少し入った坂道を上がったところにあります。弘法大師が開いた古刹です。平安時代以来、幾多の変遷を経た寺院で、平安時代中程に恵心僧都源信(「往生要集」著作者)が再興し、寺院の名を恵心院と改められました。源信は源氏物語の宇治十帖の浮舟を助ける「横川の僧都」のモデルとか。
現住職の福若亮阿(ふくわかりょうあ)さんは「先代の住職がお参りする人が何時参られても花で迎えようと、草花や花木を各地から取り寄せ住職自ら植生されて、四季折々に咲かせたんですよ」、「私も手入れをしています。時たま、賽銭箱に新しい種が添えられていたり、この花まだないからと苗をお持ち下さる方も」と笑顔で語ります。本堂前にはアサガオの苗がいっぱい並べられ、「どうぞご自由に持ち帰り下さい」と添え書とレジ袋まで用意してあります。本堂前の石畳の際にはホタルブクロが沢山ぶら下がり、庭園の紫陽花も咲き始めました。連日、大勢の観光客が訪れる世界歴史遺産の平等院や宇治上神社のように有名ではありませんが、静寂な境内はこころ和ませてくれる「花の寺」として親しまれています。(仲野良典)
「咲き出でぬ 未央柳のたよたよと」(蛇足:未央柳=美容柳の別字)