八幡に咲く芭蕉の花
八幡市の石清水八幡宮の麓に神應寺(じんのうじ)という曹洞宗のお寺があります。その本堂横の高台に高さ5メートルほどの大きな芭蕉の木があって、写真のようなでっかい花をぶら下げていました。
芭蕉は中国が原産の多年草(芭蕉は漢名。学名=Musa basjoo Sierdold ex Iinuma)で根茎は太く、葉も2メートルぐらい長くて大きいです。日本では中部以南の暖地に観賞用として植えられています。写真にあるラグビーのボール状は花です。南方系のバナナとは兄弟で幹や葉など全体的によく似ています。大きなボール状が雌花でその基部に新緑のバナナと同じような雌花の房が並んでいますが食べられません。芭蕉の葉っぱの繊維を織って布をつくります。この布が芭蕉布といわれ、「海の青さに 空の青…」と沖縄を歌った名曲『芭蕉布』です。
さて、神應寺の歴史は古く、寺伝によると石清水八幡宮を請じ迎えまつるようにと勧請した行教律師により創建され、往時は天台や真言密教の教学道場であったと伝えます。豊秀吉や家康も同寺に帰依し擁護しました。京阪のケーブル添いにある同寺の墓地には豪商淀屋辰五郎や淀城主永井(尚政か尚征)、飛行機の元祖二宮忠八、円山派から独立した画家長澤廬雪などの墓があります。また梵鐘は「先代の住職が軍事供用の強い要請を拒否して守り通した気骨ある現住職だったんです」と現住職の大木祖淨さんは語ります。しかし当時は境内はあれ放題で幽霊寺といわれていたのを現住職が本堂をはじめ諸堂をりっぱに改装し、四季折々の草木を植生させています。初夏の今は、「墨田の花火」という真っ白いアジサイや赤いハマナス、デイゴの大きな真っ赤な花も美しく咲いています。再び軍靴が響かせようとする危ない動きがありますが、平和な梵鐘が響き花々に彩る静寂な境内を守って参拝したいですね。また、同寺院一帯は絶好の緑あふれる森に包まれた抜群の散策やハイキングコースです。(仲野良典)
「芭蕉野分して盥に雨を聞く夜かな」(芭蕉)
「音をたてて花の落ちたる芭蕉なか」(鵜銭)