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 「いのちあるうちの解決を」をスローガンにたたかう関西建設アスベスト京都訴訟の京都地裁判決(1月29日)は、東京、福岡、大阪に続き、国の責任を4度認めるとともに、初めて建材メーカーの加害責任を認める画期的な内容です。早期解決、全面救済へ、政治的解決はまったなし。弁護団の一員として奮闘した日本共産党の大河原としたか参院京都選挙区候補と原告、支援者らが、裁判闘争を振り返り、次のたたかいに向けた展望を語り合いました。

■出席者
原告・遺族 岩木貴世美さん
原告    長野好孝さん
全京都建築労働組合書記長 酒井仁巳さん
弁護士、日本共産党参院京都選挙区候補 大河原としたかさん

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(右から、長野、酒井、岩木、大河原の各氏)

長野さん 京都判決弾みに早期救済を
酒井さん 企業利益優先の政治問うべき
岩木さん 新たな被害生まないために
大河原さん 救済制度創設は自らの使命

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京都地裁前で「勝訴」の第一報を伝える大河原さん〔中央〕ら弁護団=1月29日)

■企業責任認定「大穴開けた」

 大河原 みなさんの奮闘とご支援で、京都地裁で全面勝訴の判決を勝ち取ることができました。一刻も早い政治的解決が求められます。参院選で勝利し、国会でそれを実現する仕事をさせてほしいと思いを強くしています。

 酒井 京建労では、勝訴のお礼と報告、引き続く運動への協力を訴えるポスター(1面)を作ったんですよ。

 大河原 こんなポスターができたんですか。今回、「旗出し」(*1)の役をさせてもらいました。そうよくあることではないので、うれしかったです。

 長野 あの日は雨やったもんで、「悪い日にならんように」と祈るような思いで裁判所に向かいました。良い結果になって本当にうれしい。

 岩木 私は、夫の遺影を手に入廷したんです。でも裁判長から聞いた判決内容はよくわからず、外に出てから、みんなの喜ぶ様子に「あぁ、勝ったんやな」と実感が湧きました。

 大河原 わかりづらいですよね(笑い)。長野さんは典型的な「一人親方」で、東京判決や福岡判決のような枠組みでは、賠償されない可能性が高かったんです。でも、企業責任が認められたことで突破できたのは大きいです。岩木さんの場合は、労働者として勤務していた時期もあり、国と企業どちらの賠償責任も認められました。

 岩木 そう。国の責任も認められたのは後で知りました。

 長野 「一人親方」に対する国の損害賠償責任は否定されたけど、立法府の責任を問うことにより解決されるべき、と書いてある。京都の判決が弾みになって、次の大阪高裁、ほかの全国の裁判闘争で良い判決が出てほしい。

 酒井 東京や福岡の地裁では全体として勝訴しても、個別に勝った人は半数です。京都は9割以上が救われる判決で、びっくりしました。企業の加害責任では風穴どころか、大穴を開けた画期的勝利です。

 長野 それだけに、寺前武夫さん(原告団長)や岩木邦夫さん(副団長)が判決を聞けずに亡くなられたのが残念です。

 大河原 本当にショックでした。岩木さんは毎回の裁判期日に来られ、元気にされていたのに、結審(2015年6月1日)の後、容態が急変されて…。

 岩木 転移もなかったので、信じられない思いでした。

 大河原 原告被害者26人中、16人が亡くなられ、アスベスト被害の深刻さを思い知りました。

 酒井 アスベストに起因する病気はいまだ見過ごされることが多いです。肺がんでは、喫煙歴があれば、たばこが原因と診断され、アスベストの暴露を疑っても医師も理解してくれないことがあります。長野さんの場合も手術する際、肺の写真を撮ってほしいと京建労から依頼して、その写真でアスベストが原因だと証明されました。

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公正判決を求める50万人分超の署名提出を前に、集会でこぶしを固める〔右3人目から〕大河原、岩木両氏ら=2015年3月12日)

■公正判決求め署名58万人分

 長野 組合に入っていなかったら、原因はわからんかった。

 酒井 京建労は、全国に先駆けて1985年にアスベスト対策推進チームをつくり、基礎学習や対策を求める運動をしてきました。クボタショック(*2)で社会問題化した2005年以降、労災申請の取り組みを強めました。当時の運動の中心を担った山科支部書記長の故・北村晃朗さんが、京都での認定第1号になりました。

 大河原 アスベスト使用の海外でのピークは1970年代。欧米では危険性が指摘された80年代以降、使用量が減ったのに、日本では規制されず、逆に企業が輸入を増やしたことで90年代にもう一度使用のピークを迎えました。

 長野 アスベストの危険性なんて知らんかった。シートで囲った中で、アスベストが吹き付けられた壁を落とす作業もしましたよ。

 酒井 北村さんが肺がん発症から2年で亡くなり、その後も組合役員が次々に病気を発症し、「明日は、わが身」の思いでした。裁判で生まれたスローガン「原告は代表選手」は、組合員の実感であり、我がこととして運動も広がりました。

 大河原 それが、あの約58万人に迫る「公正な判決を求める署名」の数に表れたんですね。弁護士会館で開いた署名提出前の集会で、署名がドーンと積み上げられているのを見て、びっくりしました。ほんとすごいなと。

 酒井 京都総評や京都職対連などと一緒につくった「アスベスト被害の根絶をめざす京都の会」(アスベスト京都の会)にも応援いただきました。市民の関心も高く、署名宣伝では多くの激励もありました。そういう力が、京都府議会はじめ地方議会で「建設業従事者のアスベスト被害者の早期救済・解決を求める意見書」が可決されるなど大きなうねりになったと思います。

 長野 私の地元、南丹市も意見書を可決しています。

 大河原 京都は、危険性の告発に始まり、全国にアスベスト問題を広げ、裁判でも新たな到達を切り開きました。弁護団としては、神奈川、東京、福岡、大阪の各判決を踏まえ全国の力を合わせて実った成果だと感じています。

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京都地裁への提訴後、デモ行進する〔前列右2人目から〕岩木、寺前両原告ら〔いずれも故人〕=2011年6月3日)

■除去工事でも企業がもうけ

 大河原 しかし、企業は非情です。即日控訴し、京都地裁から大阪高裁にたたかいは移りました。

 岩木 ほんと、ひどい。

 酒井 京都地裁の判決後、東京のニチアス本社前の宣伝行動(2月2日)には、全国から1000人が参加しました。相変わらず、社員は出てこないし、要請書も受け取らない対応だったそうです。
 
 長野 交渉に応じる企業でも、ほとんどは「上部に伝える」と返事するだけで誠意は感じられません。
 
 酒井 許せないのは、過去のアスベスト被害に対する責任を認めないだけではなく、現在のアスベスト除去の仕事で、もうけている大手企業の姿勢です。罪の意識は全くない。

 岩木 え~、よくもまぁ。自分がまいた種やのに。責任を取らずに利益上げてるの?!

 大河原 そういう加害企業の態度を変えさせる上で、高裁でも企業責任を認めさせて、見るべき変化をつくりたい。

 岩木 建物解体工事にともなって、まだまだ被害者が広がる可能性があるんですよね。

 酒井 はい。組合員の死亡原因を見ると、毎月1人は肺がんで亡くなっています。労災申請に至らない人もいますから、相当被害者は埋もれています。

 長野 アスベストが原因の「中皮腫」になって亡くなった(12年)、作家の藤本義一さん。舞台セットや、阪神淡路大震災の被災地で倒壊した建物に含まれる粉じんを吸った可能性があると、娘さんが語ってはりますね。

 大河原 建設労働者に限らず、だれでも被害者になり得る深刻な問題だということをもっと知らせないといけませんね。

 酒井 問われる根本問題は、人の命よりも企業利益を優先する国や社会のあり方です。

 岩木 新たに被害者が出るのは怖い。裁判をせずに救われる仕組みを早く作ってほしいです。

 長野 京建労では全国の建設の仲間と一緒に、アスベスト被害者救済のための補償基金制度の創設を求めて国会議員への要請行動をしています。私も3度、国会に行きました。

 大河原 危険なアスベスト建材を製造・販売して利益を上げた建材メーカーにも相応の拠出をさせて「建設作業従事者にかかる石綿被害者補償基金制度」を作らせる。その働きかけですね。

 長野 なかなか議員本人には会えませんが、粘り強く働きかけることが大事だと思っています。

 酒井 たまたま議員会館のエレベーターの中で出くわした議員に、「お願いします」と頼んだら、紹介議員になってくれた人もいました(笑い)。

 長野 大河原先生を国会に押し上げて、必ず制度を作ってもらいたい。原告として切に願っています。

■政治の役割を今こそ果たす

 大河原 ぜひ、やりたいです。被害救済とともに解体や改修の際のアスベスト粉じん被害を完全に防止するための対策も必要です。

 酒井 そう。現在は、アスベストの暴露防止や飛散防止は、現場の業者任せです。アスベスト粉じんを防ぐには、フィルターや空気を送るファンの付いたマスクの着用が必要ですが、高額ですし、対策は困難です。

 大河原 岩木さんから、1回だけその送気マスクを使った経験があると聞きました。滋賀県庁の関係の解体工事で屋根にアスベストを使っていたことがわかり、現場でみんなに配られたと。

 酒井 法律上は、吹き付けアスベストなど明らかなものは届け出が要りますが、ボードなどは飛散しないよう手作業で、といった内容の指針があるだけ。重機で壊してしまえばわからないのが現状です。

 大河原 今こそ政治が役割を果たすときです。「後に続く人たちに同じ思いをさせたくない」と裁判に立ち上がり、志半ばで倒れられた原告の無念な思いをぶつけていきたい。

 長野 もともと私は自民党やったけど、昔の仲間にも大河原さんの支持をお願いしているんですよ。

 大河原 心強いです。早期発見と被害者への補償、新たな被害者を生みださない仕組みをつくることが、一緒にたたかった僕の責任。託された使命として頑張ります。

 (*1)裁判所前などで、おおまかな判決内容を書いた布や紙をかかげ、傍聴しなかった関係者に伝えること
 (*2)大手建材・機械メーカー「クボタ」旧神崎工場(兵庫県尼崎市)周辺で、アスベスト(石綿)による健康被害が明らかになった出来事

 (「週刊しんぶん京都民報」3月13日付より