京都市美術館改修工事に伴い、敷地内にある彫刻家・富樫実氏(86)=同市=寄贈のモニュメントを撤去する計画をめぐり、市が9日にも作品を切断・撤去する作業を予定していることが分かり、市民らが8日、市に作業中止の緊急要請をしました。

■作品を5分割、9日から作業開始

 「京都市美術館問題を考える会」が呼びかけたもので、約30人が参加しました。出席した川口伸太郎・同館副館長は、富樫氏の作品「空にかける階段’88-Ⅱ」を「大事にしなければならない」としながらも、同作品付近の土壌が汚染されており、汚染土を掘削するには作品の移動・撤去が必要と説明しました。その上で、「改修工事に遅れが出ないように撤去作業は9日に着手し、今月中に終了させる必要がある」と主張。「安全に移動させるには、高さ10㍍の作品を5分割せざるを得ず、その後の復元は難しい。分割したものをどうするのか、新しい美術館で保存・展示を検討していきたい」などと述べました。

 参加者は、「作品を分割しておいて、保存展示などあり得ない話だ。納得できない」と抗議。「市には収蔵品を管理する責任はある。工事は中止すべきだ」と訴えました。しかし、川口副館長は「今回の作業方法はベストなもの」と開き直り、9日からの工事着工を繰り返し主張しました。

■信頼関係を壊し、美術館の名前を地に落とす暴挙

 「会」代表で、彫刻家の貴志カスケさんは「市と芸術家との信頼関係を壊し、日本を代表する市美術館の名前を地に落とす暴挙だ。抗議行動を引き続き行っていきたい」と話しています。