■駅の数ほど学習会を/福祉現場の怒り力に

 今回の署名運動では、なぜこんなに保険料が高いのか、年金がなぜ引き下げられるのか、介護保険料を払っているのにどうして使えないのか――けしからんと怒っているだけではなく、その実態を分析し、話し合い、問題点を明らかにしていく学習運動を各地域で広げていくことが大事だと思っています。

 日本の保険制度は、保険料の負担割合が低所得者で高く、高額所得者ほど低いという逆進性になっています。2015年のデータでは、150万円から200万円の所得階層の社会保険負担率は16・7%と最も高く、5000万円から1億円の所得階層はわずか1・6%程度です。

 介護保険は保険料を財源の中心としたため、要支援1、2の方が保険給付の対象から外されるなど給付内容が次々と制限されています。利用料も1割から2割、3割へと上げられていく状況です。

 安倍政権が次々と社会保障制度の改悪を実行する根本に、社会保障制度改革推進法(12年)と社会保障改革プログラム法(13年)があります。それは憲法25条の理念に反し、社会保障・社会福祉は〝自助、共助〟というのが基本的な考え方です。そして財源を消費税に求めています。しかし、消費税は一律課税なので、低所得者ほど負担が大きいのが実情です。

 一方で大企業には優遇税制を施しています。「権利としての社会保障」という25条にある国の責任が大きく後退し、憲法の空洞化が進んでいるのが現実です。
 安倍政権の悪政に対し「憲法の危機。今どうしていますか」と暉峻淑子さんから手紙が来たのは先月です。ご高齢にもかかわらず、今春『対話する社会へ』(岩波新書)を上梓されました。手紙には「大きな集会も大事だけど、駅の数ほど地域で集会を開き、対話を重ねること、そういう運動を情熱を持ったあなたたちがやるべきでは」とありました。

 暉峻さんとは10年前の日弁連の人権擁護大会で講演していただいてからのおつきあいです。講演の冒頭、「人権といいながら弁護士は現実の貧困問題にあまり取り組んでないのでは」と厳しい指摘でしたが、地域でボランティアをされ、旧ユーゴスラビアの難民支援を続けるなど、地に足がついた活動を長くされておられるだけに頭が下がります。

 安倍政権は強く見えますが、ほころびが出てきています。保育園の待機児問題で「日本死ね」のブログが怒りで〝沸騰〟したように、福祉の現場にも怒りが充満しています。

 駅の数ほど学習運動を広げ、一人一人の思いをつなげていく。それが情勢を変える力になると確信しています。