■横倒し移設に作家側が反対表明

 京都市美術館(左京区)の改修整備工事に伴い、保存方法が問題となってきた大型野外彫刻のモニュメントについて、市は4日、高さ11㍍の石柱を横倒しにして敷地内に移設する「考え方」を示しました。しかし、作家が反対したことから、市はいったん、この考え方を白紙に戻し、改めて13日に作家らと協議することが分かりました。

 作品は、2本の石柱がうねるように伸びる「空にかける階段’88-Ⅱ」で、彫刻家・富樫実氏(86)=北区=が手がけました。4日の市議会文化環境委員会での市の説明によると、作品の内部の検査結果を踏まえ、「安全面」から、作品を鉄骨で補強して移動し、横倒しにして展示するとしました。

 しかし、翌5日、市が富樫さんと代理人となっている京都彫刻家協会の江藤佳央琉会長、貴志カスケさんに「考え方」を説明したところ、富樫さんは、作品のコンセプトを損なうことなどから「反対」を表明。そのため、安全性とともに、現在の位置でできるだけ形状を保ちながら展示する方法も含め、市と作家、代理人とが一緒に協議することになりました。三者協議は、初めてのことです。

 この問題では、市は当初、「安全性」を理由に、作品を切断・移設する方針を示していました。京都彫刻家協会と作家が連名で、耐震対策を施しての現状保存を市に要請。作品の保存を求める市民の世論も受け、同方針は再検討せざるを得なくなりました。

■共産党・井坂議員追及「作家の合意基本に」

 4日の同委員会で、日本共産党の井坂博文議員は、作品の保存・展示方法は「作家の合意を基本にすべき」と主張。美術館に求められているのは、「作家の思いをどう生かすのか、収蔵品を守るという確固とした姿勢だ」と強調しました。
 平竹耕三・文化芸術政策監は「作家の気持ちを大切にする」とともに、「安全に展示することは美術館の使命であり、適切に両立するよう努力を重ねる」と答弁しました。