安倍政権下で強まるメディア規制の動きや報道の自由について考えるシンポジウム(実行委員会主催)が1月14日、京都市南区の龍谷大学アバンティ響都ホールで行われ、市民ら400人が参加しました。加計学園問題などについて、菅義偉官房長官を会見で追及する姿が話題となった東京新聞の望月衣塑子記者と、特定秘密保護法の危険性を国連に通報し、国際社会に訴えた、英国エセックス大学人権センターフェローの藤田早苗さんが報告しました。両氏の発言の大要を紹介します。

■パネルディスカッション「強まるメディア規制を乗り越えるには・・・」

 私のテーマは、権力側が隠そうとすることを明るみに出すことです。有印私文書偽造で逮捕され、無罪となった厚生省労働局長の村木厚子さんの事件を担当した検事は、私が以前に暴力団との癒着をスクープした埼玉県熊谷地検の検事でした。村木さんの事件は証拠改ざん事件に発展し、検察の信頼は地に落ちました。熊谷地検時代に口頭注意だけで見送られずに改善されていれば、村木事件は起きなかったと検察幹部から言われました。

 経済部に移り、武器輸出問題に取り組みました。日本には武器輸出3原則がありますが、10年に第二次安倍政権が「防衛装備移転三原則」を閣議決定し、アメリカから武器を買い、輸出も始めています。ミサイル防衛システムのイージス・アショアは一基800億円が値上がりして1300億円です。

 安倍政権は北朝鮮の脅威をあおり、軍拡へひた走る一方、年間160億円の生活保護費を削減しています。暖房なしで冬を過ごすような社会的弱者に目を向けず軍事費に税金を費やす。大きな政治の枠組みの中で私達の生活がどんどん変えられてきていると感じます。

 森友・加計学園問題、武器輸出問題、前川喜平前文部科学省事務次官や伊藤詩織さんの取材で身の危険を冒しても告発をする人たちと出会いました。一方で、伊藤さんが準強姦罪を告発した、元ワシントンポスト支局長は、警視庁刑事部長の指示で直前に逮捕が取りやめになりました。こんなことは初めてです。

 自民党は14年11月、衆院解散直前に「荻生田文書」をテレビ各局に渡し、「公平中立、公正な報道姿勢」を求めました。安倍政権はテレビのコントロールに力を入れています。それがじわじわと局の上層部に浸透し、政権批判しない「忖度」が生まれてきていると思います。

 政権に批判的なテレビキャスターの降板や識者の交代が相次ぎました。政府が電波を支配するのはロシアや中国など少数ですが、政府が放送局に電波停止を命じる根拠は放送法4条にあり、問題だと思っています。

 菅官房長官の会見に出席するようになったのは、安倍一強の政治が続く中で、教育、行政、司法の場までもがゆがめられていることへの憤りからです。会見で手を上げても無視され、ネットや他紙でたたかれますが、それでも会社から行って来いと言われるのは、「望月さんをもっと出してください」と皆さんから反応があるからです。取材した人たちの勇気、皆さんの声、それが私の原動力です。

 問題だと感じ始めているのは、マスメディアが権力に利用されていないかということ。5月3日、読売新聞は安倍首相の「9条加憲」を報道し、首相は国会で読売を見てくれればと言いました。前川さんの出会い系バー報道は告発に出る直前でした。このような官邸サイドからの圧力に対し、メディアはどのような位置で権力と対峙していくのか、常に考えねばならないと思っています。

■「戦争する国」でなく9条を

 憲法9条が今とても大事です。人類が目指すべき方向性を表しているのが9条。軍拡に歯止めをかけるのは、9条を提唱した故・幣原喜重郎首相の思いです。アメリカの指示に基づき、戦争する国でなく、もう一度9条を作った方々の思いを若い人たちに伝え、改憲への歯止めを築いていくことが必要です。

(「週刊京都民報」1月21日付より)