映画『泳ぎすぎた夜』/ダミアン・マニベル、五十嵐耕平監督に聞く 上京区・出町座で19日公開
自ら描いた絵を見てもらうために父の職場に向かう―日仏の若手新鋭監督が雪深い青森県弘前市を舞台に、少年の冒険を幻想的に描いた意欲作『泳ぎすぎた夜』が19日から出町座(京都市上京区)で公開。監督に制作意図などを聞きました。
監督は、初長編作『若き詩人』がスイスのロカルノ国際映画祭(2014年)で特別大賞を受賞したフランスのダミアン・マニベルさんと、東京藝術大学大学院映像研究科の修了作品『息を殺して』が同映画祭(同)に出品された静岡県出身の五十嵐耕平さん。2人は、同映画祭での作品上映後のディナーで知り合い、共同で映画を制作することに。今まで扱ってこなかった「子ども」「雪国」をテーマに新機軸を目指しました。
本作は、昨年のベネチア国際映画祭に出品され高い評価を得ました。
■現実と幻想、世界との距離
マニベル 谷内六郎の画集の中の作品「泳ぎすぎた夜」からインスピレーションを受けました。昼間泳ぎすぎた女の子が、夜に夢の中で泳いでいる。浮いたベッドに波が押し寄せているものです。
五十嵐 大人には奇異に感じられるかもしれませんが、現実と幻想が混沌としている子どもには違和感がない。例えば、寝られなくて時計の音が気になると、棒を持った小人が次つぎと頭の中に現れるってことがあるわけです。
マニベル 子ども特有の世界観、子どもと世界との距離や関係性などを撮ってみました。子どもが父親の職場に向かうという骨組みは決まっていましたが、詳細なシナリオはあえて書かず、現場の雰囲気や出演者の個性や発想をもとにアイデアをふくらませました。
五十嵐 主人公の古川鳳羅(こがわ・たから)くんは弘前の音楽企画に参加し、元気に走りまわっているところで声をかけました。
マニベル 彼はワンテイクとると飽きてしまうので撮り直しがきかず苦労しましたが、表情が豊かで、ときには即興で「天才では」と思える演技を見せてくれました。彼がいなければこの作品はできなかったと思います。
五十嵐 台詞はないので、国籍に関係なく受け入れてもらえ、「自分の子どものときの感覚がよみがえってきた」という感想を多く聞きます。
マニベル これは鳳羅くんしか知らない冒険ですが、自由とはある意味孤独であるといえるかもしれません。
19日~25日12時40分・16時20分、26日~6月1日14時55分、2日以降続映(時間未定)。一般1800円、60歳以上1100円、学生・障がい者1000円。出町座☎075・203・9862。
(写真上=『泳ぎすぎた夜』©2017 MLD Films/NOBO LLC/SHELLAC SUD 写真下=映画『泳ぎすぎた夜』の案内のチラシを手にする五十嵐さん〈左〉とマニベルさん)
(「週刊京都民報」5月13日付より)