日本とロシアが受注したベトナムの原子力発電所の建設計画が、2016年11月に白紙撤回された背景を学ぼうと、現地で原発反対で奔走してきたベトナム研究者の吉井美和子・沖縄大学教授を招いた講演会が5月24日、京都市中京区のハートピア京都で開かれ、市民ら50人が参加しました。市民環境研究所とフリージャーナリストの守田敏也さんが主宰する「世界とつながる公開秘密会議」の主催。

 ベトナム政府は前首相時代の09年、国会でニントゥアン省(中部)に計4基の原発建設計画を承認。ロシアが2基、日本は民主党政権時代に官民一体の売り込みの末、2基を受注。14年に着工予定でした。ところが「3・11」以降、安全性への疑念が高まり、津波の影響を考え、陸側への移動やかさ上げで費用がかさむことから、延期を重ね「経済的理由」での撤回を表明しました。

 吉井氏は、白紙撤回の背景に、前首相による政府批判に対する厳しい弾圧の中、勇気ある知識層や文化人による署名行動、建設地に住む先住民族の反対運動などがあったことを紹介。

 自身もベトナムで、福島からの避難者の生活や放射能汚染の実態を執筆したり、大学などで講演。海外に住むベトナム人研究者による原発反対の発言などの広がりを語りました。「16年4月の首相交代は大きかった。同時期に日本で実は原発が2基しか動いていない実態を知り、政府関係者が『原発はもう過去の電源』と語った。政府の中で反対が多数派に変わっていった」と話しました。

 守田氏は、「市民の運動が原発建設を止めた。日本で再稼働を止める影響はますます大きい。声を上げ続けよう」と呼びかけました。

(写真=参加者の質問に答える守田さん〈左〉と吉井さん)