南山城村メガソーラー計画の問題点/国土問題研究会副理事長・奥西一夫京都大学名誉教授に聞く
■開発地崩壊の危険性/地域孤立の可能性も
計画地は砂防指定地で、昭和28(1953)年の南山城水害で大きな被害があった場所。よくこんな場所での開発計画を府に出したものだと、驚きました。
南山城水害では、この地域の雨量は、第2ランクでしたが、被害は第1ランクの地域と同等でした。それは、風化花崗岩に由来する地層だからです。
粒の粗い土は水を通しやすく、細かい粒の土は通しにくい。風化花崗岩の粒は直径1~2㍉で水を通しやすく、滞留させやすい性質を持っています。一定の雨量までは災害が起こりにくいのですが、一定量を超えたとたんに侵食されやすくなります。群発性の崩壊が起こりやすく、総量として大規模崩壊に匹敵する土砂が集まり、土石流を発生させます。
とくに、計画地は風化花崗岩が2次的に堆積した砂れき層からなる古琵琶湖層群の地域で、一般的な風化花崗岩よりも侵食されやすい。広域に裸地を作り出すと、豪雨時に激しい土壌侵食が起こり、開発地から土石流災害を引き起こす危険性が高いと言えます。
旧流路走り拡大する土石流
急傾斜の擁壁の内側が侵食されて崩壊する場合、計画地に降った雨水の一部が貯水池へと流れる排水溝に流れず、別の流れをつくって侵食し、崩壊する場合などが考えられます。
南山城水害に匹敵する雨が降れば、上流と計画地両方で土石流を起こすことが考えられます。上流で起きた土石流は、もとの砂子田川の流路を走る可能性が高い。90度曲げて新たな流路をつくっても、土石流は曲がってくれません。
谷を埋めた土砂は柔らかいので簡単に持っていかれます。土石流の材料が増え、雪だるま式に大きくなり、道の駅などがある下流で甚大な被害が想定されます。少し高い場所でも安心できません。各地で道路や鉄道も寸断され、ライフラインは断たれます。高台の月ヶ瀬ニュータウンを含め地域が孤立する可能性もあります。
そもそも、砂防指定地を開発させない法整備が急がれますし、府も「防災のために開発させない」と強い姿勢でのぞむことが求められます。
(「週刊京都民報」7月1日付より)