来年3月末で閉館が予定されている京都社会福祉会館(上京区)

 京都市は2月6日、二条城北側の京都社会福祉会館(上京区)を来年3月以降に解体し、土地を売却する計画を公表しました。会館を管理・運営する会館運営委員会が計画を取りまとめ、土地を所有する市が合意したもの。今後、会館は移転再整備するというものの、入居している福祉関係団体など27団体中、少なくとも23団体は追い出される突然の計画に、入居団体からは驚きとともに「市の福祉に対する冷たい姿勢を象徴している」と怒りの声が噴出しています。

土地・建物売却し新会館を建設

 同会館は福祉関係の団体が多数入居し、〝福祉活動の拠点〟となってきました。しかし、開設から約50年が経過。耐震や老朽対策が必要になっているにもかかわらず、資金確保の問題から再整備計画は進んできませんでした。

 市によると、市民生児童委員連盟理事11人や府、市らで構成する会館運営委員会が今回取りまとめた方針(別項参照*)は、建物所有者の社会福祉法人京都府社会福祉協議会と市が共同して土地・建物を売却し、同売却益で新会館を建設する計画です。新会館については、会館の創立経過を踏まえ、府・市の民生児童委員の活動拠点とすることで検討が進められているものです。

 今後、来年4月以降に会館を共同売却。昨年分路線価から試算した土地価額は9億6694万円(建物自体の価額はゼロ)で、売却益で取得可能な土地を探し、用地取得・建設などが予定されています。

 市は、運営委員会からの協力依頼を受け、「土地の有効活用につながる」ことなどから、「売却・新会館を移転整備」などとした方針に合意したと説明しました。

 しかも、運営委員会が新会館への入居を検討しているのは、現会館に入居する患者や家族などでつくる当事者団体(認知症の人と家族の会、京都手をつなぐ育成会、京都難病団体連絡協議会、京都腎臓病患者協議会の4団体)だけ。「これらの団体に可能な限り入居」してもらい、民生児童委員の研修などで連携するとしています。

 計画公表の翌日の2月7日、会館から「閉館予定のお知らせ」とするA4一枚の通知が突然、入居団体に手渡され、多くの団体には、市からの説明はありませんでした。

改修・再整備なぜできない

 こうした対応に、入居する福祉団体からは「あまりにも乱暴」との声が続出しています。

 ある団体は「仮に新会館に入居できても、開館は2023年以降と聞いている」と言い、「どの団体も財政は豊かではない。1年余りで、移転先の確保やその費用を捻出できるのか」と不安を募らせます。耐震性から会館の再整備はやむを得ないとしつつも、「入居団体への丁寧な説明と合意が大前提のはず。それ抜きの計画には納得できない」と訴えます。

 別の団体は「市の福祉の事業に少なからず協力してきたのに…。市は土地所有者としての責任を果たすべき」と訴えます。

 2015年に会館に入居した福祉保育労京都地本の書記長、土田昭一さんは「入居の際、会館からは耐震対策などを検討していると聞いたが、閉館の話はなかった。唐突だ」と驚きと怒りをあわらにします。その上で「市が支援するなら、現在の場所での会館再整備も可能のはず。市民の財産を切り売りし、福祉団体を追い出す市の姿勢は許されない」と話しています。

「合意に基づく計画に」共産党・再検討を要求/維新会派「高値で売れ」「新会館必要か」

 会館の解体計画をめぐり、計画が公表された市議会教育福祉委員会(2月6日)で、日本共産党だけが福祉団体の立場に立ち、再検討を求めました。一方、「日本維新の会・無所属」の森川央議員(西京区選出)は「売却するのであれば、高値で売却すべき」などと述べ、市有地の切り売り計画を後押ししました。

 共産党のくらた共子議員は「移転先の保障もないなど、乱暴すぎる。全ての入居団体が困ることのないよう、話し合いと合意に基づいた事業計画にすべき」と要求しました。

 森川議員は「新しい会館は必要なのか。適正に市有地を売却するのは当然」と述べました。

 *京都社会福祉会館運営委員会がとりまとめた再整備計画の主なものは、次の通りです。 土地・建物を共同売却し、▽府社協が得る借地権割合に相当する売却益を、運営委員会を母体とした新たな社会福祉法人に譲渡▽当該法人が会館を移転整備する─というもの。新設の社会福祉法人が新会館で行う事業は、▽府・市の民生児童委員活動を支援する相談員の配置▽民生児童委員会長向けの研修会の開催▽患者やその家族などの福祉の当事者団体との連携─などとしています。

【京都社会福祉会館】府市の民生児童委員が募金活動によって建設した「京都民生会館」(現在のKBS京都の場所)を売却。その売却益を活用し、市の土地を借り受け、建設したもので、開設は1969年。建物は、地下1階地上4階(敷地面積約2975平方㍍)