本格運用から4年半が経過した京丹後市の米軍レーダー基地。現在は、生活関連施設(中央)などの建設工事が進んでいます

 交通事故報告「件数のみに」/不停波でドクヘリ搬送遅れ/早朝・夜間に発電機稼働

 京丹後市の米軍レーダー基地の本格運用(2014年12月)から約4年半が経過しました。この間、米軍による約束違反が相次いでおり、米軍の運用が最優先で、住民の命・暮らしは二の次という日米地位協定の姿が改めて浮き彫りとなっています。

 特にこの1年間に約束違反が繰り返されています。一つは、米軍関係者による交通事故をめぐる問題です。これまで、防衛省は加害、被害を問わず、府と市に報告すると約束し、住民と米軍の協議組織「安全・安心対策連絡会」で概要を説明してきました。

 しかし、昨年2月4日の事故を最後に米軍からの情報提供が途絶え、1年以上にわたり〝未報告〟となる事態が起きました。こうしたもと今年3月19日の第19回同連絡会で、防衛省は一方的に、今後は重大事故を除き件数のみを報告すると方針変更を表明しました。この方針変更を出席していた同市副市長も「一定理解する」と容認。市民からは「重大な約束違反」と抗議の声が広がり、基地のある宇川連合区長が6月5日の第20回同連絡会で当初の約束通り全数報告を求める事態となっています。

米軍の情報提供が途絶えるもとで発生した事故(2018年7月27日、京丹後市)

 人命に関わる問題も起こっています。昨年5月には、米軍によるレーダー不停波で、ドクターヘリによる救急搬送が17分遅れる重大事態が発生。防衛省は、米側は停波要請があれば速やかに停波すると約束していましたが、消防の要請にもかかわらず、停波されませんでした。

 不停波の理由は、米軍や消防、同省らが参加する検証会議で、米軍と消防の「意思疎通が円滑に行われなかった」と結論づけられました。しかし、米軍と消防の具体的なやり取りや、停波マニュアルの開示について、防衛省は「レーダー運用への支障」を理由に公開を拒否しました。

抗議受けても土曜工事強行

 住民生活への影響も続いています。今年の5月12日から26日にかけて米軍が、基地内にある発電機を早朝・夜間に稼働したことが地元住民の監視で発覚しました。発電機は基地の本格運用開始直後から「夜も眠れない」という深刻な騒音問題を引き起こしました。そのため、抜本対策として商用電力が昨年9月に導入されて以降、米軍はメンテナンスなどによる稼働は平日の昼間に行うとしていました。住民、市長による抗議にもかかわらず発電機の稼働は続きました。

 この他にも、生活関連施設建設などの基地の2期工事をめぐり、事前連絡無しで原則行わないとしていた土曜日の工事を強行。府、市の抗議を受けた直後にも再度、強行しました(昨年4月~5月)。

 繰り返される約束違反は、基地配備当初から起きてきました。交通事故の防止のための米軍属の集団居住・通勤も、当初から賃貸住宅への入居や私有車(Yナンバー)での通勤などで破られました。これらの事態からは、地位協定のもと、基地配備の大前提とされた「住民の安全・安心の確保」が果たされていないことが浮き彫りとなっています。

不停波問題を追及する井上議員(18年6月)

■住民無視許されない/井上参院議員 実態示し繰り返し追及

 日本共産党の井上哲士参院議員は国会論戦を通じ、京丹後市の米軍レーダー基地で繰り返される約束違反の根底にあり、異常な特権を米軍に与えている日米地位協定の実態を明らかにし、政府を追及してきました。

 米軍関係者による交通事故報告をめぐる問題では、3月28日の参院外交防衛委員会で方針変更の理由を追及。同省は、米側から「軽微な事故まで全て報告することは適当ではない」という申し入れを受けたとし、方針変更は米軍の意向であることを認めました。また、重大事故の基準は「一義的に米側が判断する」としました。

 これに対し、井上議員は、「一方的に米軍から言われたからと、従来の約束をほごにすることはあってはらない」と厳しく追及すると、岩屋防衛大臣は、「一切の事故について連絡会に報告するという明確な合意はなかった」と居直りました。

 昨年5月のレーダー不停波問題では、井上議員は外交防衛委員会(18年6月12日)で、停波要請があれば約束通りに米軍が確実に停波するのかと何度も迫りました。しかし、同省は明言を避け続けました。その後、同省が7月17日に井上議員への説明で、米軍の運用上停波されない場合があることを認めました。人命よりも米軍の運用優先が改めて浮き彫りとなりました。

 発電機稼働問題では、井上、倉林明子両参院議員の5月24日の聞き取りに対して防衛省は、「(稼働を控えるよう)申し入れているが、運用のことであり、メンテナンスのためにやむをえないと言っている」という無責任な態度に終始。井上議員は、「メンテナンスは部隊運用に影響しない」と厳しく指摘しました。

 この間、井上議員は、国会論戦を通じ、米軍は住民に対する約束を守る気もなければ、防衛省は守らせることもできないという異常な地位協定の実態を示し、一貫して基地撤去を政府に迫ってきました。