労働環境改善へ具体的提案も、夜勤回数制限・インターバル確保を「指針」に

 日本共産党の倉林明子参院議員(京都選挙区)は、社会保障制度の基盤を切り崩す安倍政権と正面から対決し、医療・社会保障の分野でも、命を大切にする政治の実現目指して徹底論戦をしてきました。

 その一つが、看護師の過酷な労働実態の改善です。看護師の増員や政府の実態調査を求める医労連などの粘り強い運動や倉林氏の看護師としての経験を生かした質問が実を結び、厚労省による看護師(医師も含む)の勤務アンケート調査が、2015年度に初めて実現。厚労相に、現場の実態を認識させ、同調査は17年度まで3年連続で実施されました。

 契機は、2015年7月6日の参院行政監視委員会です。倉林氏は、夜勤の多さなど過重労働を理由に、75%の看護師が離職したいと考えている現状(日本看護協会調査)を告発。実態調査を要求しました。これを受け、塩崎恭久厚生労働相(当時)が実施を約束しました。

「現場厳しい」厚労相が答弁

 その後も倉林氏は、この問題を繰り返し追及してきました。16年4月4日の同委員会では、厚労相の答弁に基づき実施された政府のアンケート調査を取り上げて追及。回答者が1247人にとどまり、極めて不十分ながらも「拘束時間が16時間にもなる2交代が6割を超えていることが分かった」と述べ、改善と調査の継続を要求しました。これに、塩崎厚労相は「看護師の現場はかなり厳しいと再認識した」と述べ、調査の継続を約束しました。

 国会質問と運動を反映し、政府は16年の診療報酬改定で、不十分ながらも「看護職員夜勤配置加算」に条件付きで点数を引き上げるなどの改善項目を盛り込みました。

 倉林氏は、労働環境改善のための具体的提案も行っています。17年4月の参院厚労委員会では、看護師の増員とともに、看護師確保法に基づく基本指針が、制定から25年間一度も改定されていないことを指摘。夜勤回数の制限、勤務間のインターバルの確保、1日8時間労働を基本とした長時間労働規制などを盛り込むよう求めました。

医師不足の観点が欠如

 医師の過重労働問題も繰り返し追及。原因に、「医師数が絶対的に不足している」との観点が政府に欠如していることを批判し、抜本的増員と診療報酬の引き上げを求めてきました。

 政府が今年3月、「働き方改革関連法」で、研修医など一部医師の残業時間の上限を「年1860時間」としたことについて、同月14日の参院厚生労働委員会で、過労死ラインの2倍の残業を容認するものとして厳しく批判してきました。また、昨年3月27日の同委員会では、医師の〝超長時間勤務〟の実態を突きつけ、労働時間や休日などの正確な実態把握を要求。加藤勝信厚労相(当時)が調査すると答え、昨年度に実施されました。

医療費ゼロ税率を提起/888億円不足「答弁間違い」、補てん問題根本的解決へ

 厚労省が昨年7月、医療機関への消費税補てんが大幅に不足していたことを発表しました。この問題でも、倉林氏は大きな役割を発揮しました。

 医療機関は、必要な物品購入や仕入れの際に、消費税を支払いますが、医療費は非課税となっているため患者に転嫁できません。そのため、国は、消費税相当分を診療報酬で補てんしてきました。ところが、14年に消費税率が5%から8%に引き上げられた際、厚労省の集計ミスで、増税に対応した補てんがされていなかったもの。

 倉林氏は同年11月15日の参院厚生労働委員会で、この問題を追及しました。病院では、4年間の補てん不足が888億円に上ることを挙げ、「重大な間違いだった」と指摘し、政府が繰り返してきた「おおむね補てんしている」という国会答弁を「撤回すべき」と迫りました。根本匠厚生労働相は「当時の国会答弁の内容は、誤ったデータにもとづく間違ったものだ」と認めました。

 さらに、倉林氏は、根本的な解決に向けての対策を要求。仕入れにかかった消費税は還付されるよう医療費「ゼロ税率」の導入を選択肢として検討すること、「ゼロ税率」の場合は免税対象となる小規模な医療機関の事務負担が過重とならないよう対応することを求めました。

■本質に切り込む追及/京都民医連副会長・京都民医連中央病院院長 松原為人さん

 厚労省による消費税の補てん不足、医師の長時間労働問題、いずれも倉林さんの質問が光っています。

 そもそも消費税の問題で言うと、診療報酬で補てんすること自体に問題があります。補てん率は100%ではなく、急性期病院ほど補てん不足が生じており、病院経営を圧迫してきました。しかも、診療報酬で補てんするということは、結局、患者負担に跳ね返る仕組みで、健康保険適用の医療費は非課税という国の建前とも矛盾するものです。

 この問題の核心を倉林さんがしっかりとらえているからこそ、厚労相に誤りを認めさせただけでなく、問題の根本解決を迫ることができました。

 医師の長時間労働の問題もそうです。根本にあるのは、医師不足であり、それを生み出している政府の医療保険財政への拠出金削減です。ここに切り込んでいるからこそ、医師不足問題も底をついた質問ができる。安倍政権に正面から対決する鋭い質問をこれからも期待します。