たてくんミュージアム
キャラクターの着用するオリジナルTシャツで“京アニ愛”を語る楯さん

 京都市伏見区のアニメ制作会社「京都アニメーション」(京アニ)第1スタジオで発生した、放火殺人事件(7月18日)からまもなく1カ月。ファンから追悼や激励のメッセージが続いています。

 アニメや戦隊ヒーローなどのフィギュアを私設展示する「京都西陣 たてくんミュージアム!」(京都市上京区)の館長、楯秀樹さんも、その一人。気持ちが落ち込んだ時期に、京アニの作品「けいおん!」が心の支えになったと胸の内を語ります。

 事件の翌日、自身のTwitterで、「夢や感動を与える素晴らしい仕事をしてた人たちが命を奪われ、大変残念で痛恨の極み」とつづり、「『けいおん!』は僕にとって命の恩人的存在でした」とのべ、追悼とファンとしての応援のメッセージを発信しました。

 「けいおん!」は、女子高校の軽音楽部を舞台にした部活アニメ。バンド「放課後ティータイム」(HTT)の結成から卒業までを描くストーリーで、2009年4月からTBS系テレビの深夜帯に放送されました。現在は、YouTube 動画でも配信され、海外にもファンが広がっています。

 楯さんは、アルバイトを3つ掛け持ちして、自宅を改装したミュージアム構想を実現。その過程にあった10年前、「けいおん!」のアニメ放送と出会いました。当時は、一日中、病院やホテルのトイレ清掃に明け暮れ、心身に不調をきたす寸前まで追い込まれた状況で、「放送のある土曜日を唯一の楽しみにして、頑張れた」と振り返ります。

 そんな特別な思い入れもあって、「けいおん!」のフィギュアコーナーは、当初から陳列に1ケースを丸ごと当てています。

 みんなが仲良く、成長していく姿に癒やされ、作品に描かれている鴨川や北山など身近な京都の風景に、キャラクターと出会えるような親近感があると評する楯さん。「音が口や指の動きと正確に合う繊細な仕上げで、漫画のキャラクターに命を吹き込んだのが京アニのスタッフだ」と称賛します。

 今回の事件を受けて、幅広い年齢層のファンへの影響力と、支援の広がりを知るにつけ、「人が生きていく上で、衣食住だけではなく、芸術・文化の持つ力の大切さを実感する」と話しています。

 同ミュージアムの維持費である入館料から、一部を京アニへの支援金にあてる予定です。