京都水道グランドデザイン
府が水道事業の広域化を掲げるグランドデザイン
光永敦彦
光永敦彦幹事長

 安倍政権が2018年12月、水道事業の民間参入を促進し、広域化・民営化を狙う水道法改定法を強行し、京都府も広域化・民営化への動きを加速しています。日本共産党府議団の光永敦彦幹事長に、国や府、自治体が進めている水道広域化や民営化への問題点と狙いについて聞きました。

府内3圏域で広域化進める

 ─京都府は、水道についてどのような方針で進めていますか

 府が昨年11月に策定した「京都水道グランドデザイン」(以下府GD)では、目的に「市町村域を超えた広域連携や、民間事業者との連携を推進します」と明記し、府内を「北部」「中部」「南部」の3つの圏域に分け、広域化・広域連携を進めるとしています。広域化を進める理由は、水需要が減少することや、老朽化した管路の更新、技術職員の高齢化などの問題解決のためと強調しています。

 また「京都府営水道ビジョン」(17年改定)では、府営水道について、府南部を中心とした受水10市町での水道広域化が検討されています。

 現在の動きでは、府営水道事業経営審議会が8月22日に開かれ、府営水道の料金単価を20年度から3水系で統一する中間答申案を公表しました。一部自治体で大幅な値上げにつながる可能性があり、住民への負担増は許されません。

 これは、改定水道法のもと、水道広域化と民営化を目指すための料金の統一が狙いです。府の方針のもと、府北部での広域連携の提案も始まっていますし、各自治体でこうした議論が始まっていくと考えられます。

再公営化が世界の流れ

 ─水道の広域化・民営化にはどのような問題点がありますか

 そもそも「公衆衛生の向上及び増進」(憲法25条2項)の具体化として、水道法で「清浄にして豊富低廉な水の供給を図る」とされています。だからこそ「命の水」は公が担ってきたのです。ところが、水道事業でもうかるところを企業に売り渡すことになります。再公営化が広がる世界の流れにも逆行しています。

 広域化では、府内の多くの自治体が「地理的な問題から広域化は難しい」と回答し、各事業体で経営状況も異なっているのが実態です。府が広域化を狙う、府営水受水市町では、自己水と府営水をブレンドする形で市民に提供していますが、広域化推進により、自己水の廃止と料金の値上げが懸念されます。本来、災害時には簡易水道など、地域分散型水道が重要だと専門家も認めています。府が主導して自己水の廃止・縮小へ追い込むようなことがあってはなりません。

グランドデザインで示された府内3圏域

水道法改定まだ「序章」

 ─どういう背景でこうした議論が行われ、今後、どのような運動が必要になってきますか

 総務省が昨年策定した「自治体戦略2040」では、人口減少にともない自治体行政の効率化など、これまでの自治体のあり方を大きく転換する方針が打ち出されています。府の水道方針を進めてきた前府知事で、総務省出身の山田啓二氏は「自治日報」(4月12日付)のコラムで、水道法改定は「序章に過ぎない」とし、「地方公共団体の新しい形態が議論されるべき時にきている」と、さらなる自治体業務の民間開放を唱えています。

 浜松市では、上水道のコンセッション(民営化)が検討されてきましたが、民営化の問題点が告発され、市民の反対運動が広がり、市長が方針を無期限延期しています。水道事業をはじめ、さまざまな自治体業務が企業の巨大なもうけ口として狙われています。こうした狙いを告発し、住民自治と地域を守り、持続させるための自治体のあり方を示していく必要があると思います。