仁和寺門前ホテル計画 「特例」適用なければ撤退 事業者が住民説明会で明言、大規模ホテル前提に「市と協議」/地元協議会からも「反対」意見も
京都市の世界遺産・仁和寺(右京区)門前で、市の「上質宿泊施設誘致制度」による規制緩和を前提に進められている大規模ホテル計画をめぐり、事業者が、同制度の適用がなければ計画は撤退せざるを得ないと明言していたことが分かりました。併せて、市が得られているとする地元のまちづくり協議会の「賛同」について、協議会メンバーから反対の声が上がっていることが判明。景観破壊の計画を市自ら誘導し、偽りの「住民合意」のもとで進めようとしていることが明らかになりました。
判明したのは、事業者で、全国でリゾートホテルを運営する「共立メンテナンス」(東京都)が昨年12月19日、同区内で開いた地元説明会です。同説明会は、計画地境界から100㍍以内の2町と3町の一部にだけ、事前にナンバーを記した案内状が配布され、案内状持参者だけの入場を許可するというもの。複数の参加者への取材で内容が分かりました。
本来、計画地は、延べ床面積3000平方㍍以下の宿泊施設しか建設できない所です。ところが、「特例」を認める「上質宿泊施設誘致制度」(2017年)の適用第1号となることで、延べ床面積約5800平方㍍のホテル(客室数72)が計画。完成すれば、門前一帯の古都の景観や住環境は一変します。
説明会で共立メ社は、「3000平方㍍であれば、(採算面で)事業計画としては成り立たない。撤退せざるをえない」と断言。同制度ができたことを受け、当初から大規模ホテルを前提に市の各部署と協議を積み重ね、相談してきたと説明しました。景観・住環境破壊の計画について、市が旗振り役を務め、お墨付きを与えてきたことが明らかになりました。
協議会メンバー「計画再考して」
門川市長はこの間、計画について住民賛同を得ていると主張していますが、その根拠が〝偽り〟だったことも説明会で判明しました。門川市長が「賛同」の根拠としているのは、市の認定制度に基づき16年に発足した、門前町3町の約70軒でつくる「仁和寺門前まちづくり協議会」の計画「受け入れ」(19年6月の総会)です。
ところが、同説明会に参加した協議会メンバーの数人は、同席した市の担当者を前に口々に大規模ホテル計画に反対を唱えました。「協議会に委任状を出して、お任せしたことを反省している。計画を再考してほしい」「世界遺産の景観を大きく変えるものだ。私たちにとって利益はない」「なぜ、この場所にこれだけの(規模の)ホテルができるのか」と発言しました。協議会以外で参加した大森直紀さん(42)も「早急な手続きで、1200年の歴史を持つ仁和寺門前での特例を認めることは、後世に禍根を残す」などと訴えました。
(「週刊京都民報」1月12日付より)