レストランが休止し、再開に向けて清掃作業する利用者

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、障害者が働く施設も苦境に立たされています。特に飲食店の場合は、外出自粛で客足が落ち込んだり、営業自粛などで売り上げが急減。自主製品を扱う事業所でも納品先の休業や、祭りなどのイベント中止が相次ぎ、行政の支援を求める声が広がっています。地域おこしや障害者の働く場を提供してきた、レストランやホテルを営む府北部2施設での状況を聞きました。

■リフレかやの里/与謝野町

町内に感染者全館営業自粛

 「レストランやお風呂、ホテルも休止に」「賃金をどうやって払えばいいのか」…。社会福祉法人「よさのうみ福祉会」が与謝野町からの指定管理を受けて運営する「リフレかやの里」。11日から全館(レストラン、風呂、ホテル)の運営が休止となりました。

 地元野菜をふんだんに使ったランチビュッフェが人気でしたが、3月の政府の新型コロナウイルス専門家会議の感染事例で「ビュッフェスタイルの会食」があげられてから、客数が激減。3月の売り上げは例年の半分ほどに落ち込んだといいます。

 7日には同町内で初の感染者が判明。町が、町営施設の閉館方針を出したため、11日から5月6日まで全館の営業が自粛となりました。

地野菜をふんだんに使用したランチビュッフェが人気のリフレかやの里

 「リフレ」は2011年、丹後・与謝地域で初となる、最低賃金が保障される障害者就労継続支援A型(最低賃金の時給909円)として営業を開始し、現在9人がフロント、ホール係、皿洗い、掃除、ベッドメイク、風呂掃除などで働いています。

 レストランなどが営業自粛したため、現在の仕事は、室内や周辺の掃除や手入れなどをしている状態。同施設管理者の藤原さゆりさんは、「2月は例年よりも売り上げは好調だったし、5月の連休は一番の稼ぎ時。期待していただけに、本当に残念です。生活を支えている利用者さんの給料をカットするわけにもいかないので、国からの助成など、運営を続けていくための支援をしてほしい」と話します。

 「リフレ」で働く60代の女性は、脳出血を起こして体にマヒの症状が残りましたが、1年半前から受付や電話対応などで働いています。女性は「やっと仕事に慣れ始め、お給料ももらえるし、やりがいも感じていたのに、残念です。障害があっても働ける場を守って欲しい」と語ります。

 普段はレストランで案内や食品の補充などを担当している男性(40代)は、「レストランが休業したので、室内の掃除や模様替えをしています。早く終息して働けるようにしてほしい」と話します。  「よさのうみ福祉会」の青木一博理事長は、「障害があってもいきいきと働ける場をつくろうと、地域の農業や町おこしと一体となった施設です。法人全体の運営も地域の人口減少にともなう利用者減や、国の報酬改定などの影響で、厳しくなっています。障害を持つ人と、地域のためにも国が支援をしてほしい」と訴えます。

■カフェレストランほのぼの屋/舞鶴市

ランチに異変昨年比6割減

 日本共産党の舞鶴市議、小杉悦子さんと石束悦子さんが、市内のあるレストランを訪ねると、異変が起こっていました。通常なら、本格フレンチ料理が手軽に味わえるとあって、ランチ時には、マイクロバスなどでお客さんが詰め掛ける人気店「カフェレストランほのぼの屋」。この日のランチのお客さんは2組だけでした。

樫村さんから話を聞く、日本共産党の(左から)小杉、石束両舞鶴市議

 「ほのぼの屋」は、就労継続支援施設「ワークショップほのぼの屋」(本部は社会福祉法人まいづる福祉会)の授産事業の一つとして、02年からスタート。味に加え、接客のサービスも好評で地元に定着してきました。

 しかし、新型コロナウイルスの影響は店の経営を直撃しています。店長で「ワークショップほのぼの屋」の施設長の材木淳志さんと、実践責任者の樫村泰高さんはこう言います。

 「去年と今年の3月の売り上げを比較すると約6割の減です。4月、5月は売り上げの柱になっていた結婚式の披露宴のキャンセルで、赤字は必至です」

 「ワークショップほのぼの屋」では、レストランと隣接するホテルに加え、市からの受託業務を手掛け、就労継続支援A型で6人、同B型(非雇用型、平均時給670円)で30人の計36人の障害者が働きます。

 材木さんは「レストランの状況を考えると4月以降もこの金額が支払えるのか。でも、やりがいを持って働ける場をなくすことだけは避けたい」と言います。

脆弱な基盤に追い打ち

 障害者施設は、国や自治体からの補助があるものの、もともと財政基盤は脆弱です。「融資や雇用調整助成金が使えるといっても、一般の民間事業所のように、それだけで赤字が埋められるとは思えない。福祉施設ならではの国からの補てんをぜひ実現してほしい」と訴えました。