金閣寺が違法工事 京都市埋文研研究員が行政指導・原状回復求め申し立て/北山大塔推定地に石垣設置など無届け工事
管理・監督責任ある京都市の“容認・黙認”姿勢も問題視
世界遺産で、国の特別史跡・特別名勝となっている金閣寺(鹿苑寺)庭園=京都市北区=をめぐり、室町幕府3代将軍・足利義満(1358~1408)建造の仏塔「北山七重大塔」の基壇推定地で文化財保護法に違反して現状変更が行われているとして、京都市埋蔵文化財研究所嘱託職員の東洋一さん(64)=京都市左京区=は6月29日、文化庁に行政指導と現状回復を求める申し出を行い、同日、記者会見しました。
文化財保護法では、特別史跡・特別名勝内では、現状変更を伴う計画には、軽微な仕様(材質、色、形状)の変更でも事前に届け出が必要です。保存に影響を及ぼず行為に対しては、文化庁長官は現状回復を命じることができるとしています。
問題となっているのは、駐車場から舎利殿「金閣」へと向かう途中にある一辺40㍍の方形で高さ2㍍の盛り土部分。東さんによると、宗教法人鹿苑寺(金閣寺)は、2015年からのトイレ改修に伴い、既存道路が使えなくなるとして、一時的な仮設通路の設置などの現状変更の届け出をしたものの、以前から無届けで通路や広場の設置しており、石垣設置など計画には書かれていない工事も確認されているといいます。文化庁から計画が許可された以後、計画通り実施されているか管理・監督責任は京都市にありますが、市が「軽微な計画の内容変更にあたる」などとして“容認”してきたとして、その責任についても問題視しています。
また、通路設置が行われている盛り土部分は、古文書に足利義満が14年かけて建造し、(建物頂上部の)九輪を上げたのに落雷で焼失したとの記述がある、高さ約110㍍の七重の塔「北山七重大塔」の推定地であり、九輪の一部とみられる金銅製の遺物を発掘した(2015年)隣接地にあたるといいます。
文化庁はトイレ改修に伴う現状変更の届け出にあたり、重要な遺構が検出された場合、計画変更など保存を図ることを条件にしており、事前発掘調査で上部に燃えた土の跡が確認されたほか、発掘報告書で方形の高まりは「室町時代に構築された基壇であることが判明した」と述べていることから、「北山七重大塔である可能性があり、通路設置工事は、文化庁の承認条件を無視したものである」と批判。すみやかな行政指導と現状回復を求めています。
また、京都市埋蔵文化財研究所が、調査段階の「調査現場業務用」の報告では、「ある程度固められた土層で構築されている」としていたものが、発掘調査報告の「まとめ」では「各層は密な堆積ではなく、締まった土質でもないことから大重量を支える基壇とは考えにくい」としているほか、「まとめ」で上部の土が焼けている原因についても、古文書の引用に中略を入れ、応仁・文明の乱の際に火災が起こったように記述し、焼けた時期を「北山七重大塔が雷より焼失した時や応仁・文明の乱の時などが考えられる」として特定をさけるなど、宗教法人鹿苑寺の意向を「忖度」した疑惑すら生じると主張しています。
申し出に対して、文化庁は「申し出書が届いておらず、コメントできない」、宗教法人鹿苑寺(金閣寺)は「(申し出書)を見ていないので、わからない」、京都市は「申し出書を見ていない。コメントを差し控えたい」とそれぞれのべています。
共産党京都市議団 現地調査行い、市の責任追及
この問題をめぐり、日本共産党京都市議団は現地調査を行い、管理・監督責任がありながら、違法行為を容認・黙認してきた京都市の姿勢を批判してきました。
同党市議団は、東氏とともに行った現地調査(昨年11月)を踏まえて、市議会文化環境委員会(同12月)で、冨樫豊、堀信子両議員が(2015年の現状変更の計画届け出)以前から無届けで道路が造成されてきたことを追及するとともに、九輪の一部とみられる遺物の文化財指定などを要求。今年3月の同委員会では、堀議員が、無届けでトイレ横に石垣が設置されている問題を追及しました。4月には、市議団として再度の現地調査を行っています。