【新型コロナ京都フォーラム呼びかけ人に聞く】新しい生活様式、焦点は「時短」に/京都自治体問題研究所前理事長、神戸松蔭女子学院大学教授 中林浩さん
講座では、「ほんとうに望ましい『新しい生活様式』とは」をテーマにしました。
“安全ファシズム”の危険性感じる
政府は今、マスク着用や3密の回避などの「新しい生活様式」に国民が取り組むよう盛んにキャンペーンをしています。確かに、第2波の感染防止・警戒策として、国民一人ひとりの備えは必要です。しかし、市民の日常生活の上からの監視・弾圧の危険性はないでしょうか。自民党・安倍政権が、非常時を理由に、立憲秩序を停止し、政府に権限を集中させる「緊急事態条項」を盛り込む改憲論を主張したことと合わせ、私は「安全ファシズム」の危険性、においを感じとりました。
政府の上からではなく、住民目線、住民の立場から求められる「生活様式」とは何か。講座では、みなさんと一緒にこの問題を考えたいと思っています。
私の専門は都市計画で、この分野では「生活様式」という言葉をよく使います。そこでの「様式」とは、長年、住民みんなが作り上げてきた習慣、生活の集積をいいます。ところが、政府の「新しい生活様式」は、そうではないことを講座では明らかにしました。国民の生活を国家の管理に置き、「新たな日常」として、デジタル化・AI利用を一気に進めようとする、財界の狙いとも関連していることを指摘しました。
一方で、国民にとって望ましい「生活様式」がクローズアップされていることも興味深いところです。私の恩師で、建築学者の故・西山夘三京大名誉教授は「生活様式論の焦点は、労働から開放された時間をどのように使うのかだ」と指摘しています。ほんとうの「働き方改革」を行うのか、長時間労働・休暇の少なさの反省、少人数の教育・保育の実現が問われています。国民にとって望ましい「生活様式」とは、労働時間の短縮であり、とりわけ、医療・福祉関係者が普段からゆったりと生活できる仕組みや、非常時に自営業者や非正規が安心して暮らせる制度保障でしょう。
「カジノ」「リニア」なぜやめない
併せて、講座では、「観光の復権」も強調しています。政府はカジノや究極の密室交通であるリニア新幹線を進め、京都市も一緒になって、インバウンド優先、外資系や東京・大阪資本のホテル誘致・推進という偽りの観光政策を進めてきました。「新しい生活様式」というのなら、なぜこうした路線をやめないのでしょうか。観光の再構築の必要性を提起しています。
コロナ禍というピンチをチャンスに変え、私たちにとって望ましい「生活様式」を進める、その一助に講座がなればと思います。