“黙っていたら使い捨て”コロナ雇い止め撤回求め提訴 和紙加工メーカー元従業員/全印総連が支援「『モノ扱い』許さない」
新型コロナウイルス感染拡大に起因する解雇や雇い止めが6万人を超えるといわれるなか、全印総連京都地連の加盟支部の女性がこのほど、会社に対し雇い止めの撤回を求めて京都地裁に提訴しました。「黙っていたら使い捨てにされる。だれかが声を上げないといけない」と勇気をもって立ち向かう決意をしました。
提訴したのは、山崎富子さん(57)=京都市=です。書道用紙の販売、和紙加工メーカーの株式会社コード(伏見区、神門素子社長)に2018年5月、有期雇用契約で採用され、週3日、色紙の製造や御朱印帳の表紙づくりに従事しました。
感染拡大防止の緊急事態宣言を受けた4月、会社の一部休業に伴い、ほかの社員と共に休業。そのまま、コロナの影響による業績不良を理由に8月6日で雇用契約を終了する通知(7月5日付)が届きました。
山崎さんは、採用時、「1年更新、60歳まで」とする雇用契約で、1回目の更新時期が来た昨年は、契約更新の手続きもなく継続されましたが、今年は様子が違いました。3月に社長と取締役との「3者面談」に呼び出され、「みんなと仲良くしていない」「仕事の効率が悪い」などと身に覚えのない叱責を受け、改善がない場合は雇い止めを検討する旨を宣告されました。
西陣の手機、電子部品のはんだ付けなど、もの作りの仕事に従事してきた山崎さん。「大きなミスをしたわけではなく、一方的に契約を更新しないと言われても納得できません。辞めさせられる理由を公の場で明らかにしたい」と話します。
山崎さんは、「呼び出し」を受けたころから不安が募るようになり、会社側から「関わるな」と言われた労働組合員に相談。同社員による伏見島津分会(全印総連京都地連個人加盟支部「ユニオン京」)の村上宏分会長、安達重治書記長らの協力を得るなか、6月に組合に加入しました。分会は、団体交渉で雇用継続を求め、京都地連としても山崎さんの雇い止め撤回を訴える支援行動を展開しています。
村上分会長は、「有期雇用労働者の雇い止めが増えているが、調整弁として“モノ扱い”にするのではなく、みんな同じ人間として保障される社会にしたい」と裁判の意気込みを語っています。
雇調金活用し継続の努力を
担当する中村和雄弁護士は、コロナ対策として政府も従業員の雇用を維持するよう事業者に呼びかけ、休業手当を支払う中小企業には国が全額助成する雇用調整助成金(雇調金)の活用を促しており、12月末まで延長もされたことを指摘。「雇調金は、使用者の負担なく雇用継続を行うもので、それを使わずに雇い止めにするのは身勝手です。コロナ禍の状況で雇い止め回避の努力を尽くしたかが問われる、全国的にも注目の裁判です」と話しています。
第1回口頭弁論期日は26日午前10時、京都地裁。