鈴木豊子議員(中央)らと宣伝に立つ矢田さん(左)=11月14日、山科区

 京都市が、2024年度に予定する、市民税の独自減免制度廃止のための条例改定案が継続審査となったことを受け、改定案の撤回を求める市民の運動が各地で展開されています。日本共産党は、減免廃止による福祉施策への影響を合わせると市民負担増は合計約15億円にも上ることを告発し、議会で徹底論戦をするとともに、「撤回目指して一緒に頑張ろう」と市民の運動を激励しています。

月8000円が1万8000円に

 「いま、頑張らないとこれから先、ずっと後悔する」。制度の存続を求める矢田真一さん(70)=山科区=は、じっとしていられない思いで、病気を押してある行動に出ました。議員への要請です。

 先月までがんで入院し、現在、抗がん剤治療のために通院中です。減免制度の適用を受けており、制度廃止に付随して福祉施策の減額措置がなくなったら、通院費の負担限度額(国保の高額医療費支給事業)は月8000円が1万8000円になります。

 「年金生活者がこれだけの医療費を払ったら、生活は困窮します。助けて下さい。市会議員の先生の皆さん、(減免制度)存続のために動いて下さい」

 条例改定案が、継続審査で市議会の総務消防と教育福祉両委員会で審議されることを受け、窮状を訴える手紙を8日、両委員会委員や山科区選出の議員にファクスで送付。顔見知りの自民党市議などには、訪問して直接、実情を訴えました。

 ファクスから翌日の9日の総務消防委員会、2日後の11日の教育福祉委員会では、矢田さんや市民の訴えが届き、各党委員は改めて、福祉への影響の大きさを指摘しました。

 矢田さんは言います。「もうひと頑張りや」。14日には、日本共産党の鈴木豊子市議が呼び掛けた、減免制度存続を求める地元での宣伝に加わりました。「負担軽減のため、市は経過措置を取るというけど、いずれは大変な負担がのしかかる。廃止案は撤回しかない」

正木さん(左端)に署名の説明をする(右から)中山、杉野、加藤の3氏

 居ても立ってもいられない市民の行動はさまざまに広がっています。既に、社保協や市民から減免制度廃止の中止を求める請願や陳情が23件、市議会には提出されています。条例改定案の継続審査を受け、今月10日には、京生連が市に廃止の撤回を求める要望書を提出。年金者組合京都府本部などが、同様の申し入れを予定します。

減免廃止は弱い物いじめ

 日本共産党の北白川後援会は14日、減免制度廃止中止の市長宛ての要望署名を集めるため、同党の加藤あい市議と会員訪問をしました。既に、約20人から署名を集めています。

 この日、加藤さんや後援会の中山春夫さん(68)、杉野寿信さん(同)の訪問を受けた正木昌子さん(78)は二つ返事で署名に応じました。「減免廃止なんて弱い者いじめでしょ。撤回へ頑張って」

 3人は言います。「減免廃止は、市が今後狙う、福祉の大リストラの突破口。なんとしても撤回させよう」

京都市に要望書を提出する京生連のメンバーら

公的責任後退の突破口 

日本共産党京都市議団団長 井坂博文さん
井坂団長

 継続審査で明らかになったのは、市の無責任で、市民の生活を顧みないやり方です。一つは、経過措置の問題です。経過措置の内容も財源も不明。しかも、福祉施策の影響額の約7割を占め全国一律の国保や介護保険、後期高齢者医療については、経過措置はなじまないとしていました。これでは、経過措置の保障もないまま、議決だけを求めているのと同じです。

 もう一つは、個人情報を盾に議決を迫っていることです。「税の情報を他局に提供するには、個人情報審議会に諮る必要がある。それには議決が必要」との答弁を繰り返していることです。議会に責任を押し付ける、無責任な対応です。

 この減免制度は、他都市にはない、市民の暮らしを守る誇るべき制度です。ところが、市は「全国にない特異な制度で不公平」として、低所得者を狙い撃ちしています。市は「行財政審議会」で、国基準以上や他都市より手厚い施策をやり玉に上げ、廃止を狙っています。減免制度廃止は「行財政審議会」の先取りであり、公的責任後退の突破口です。

 一方で、市民の運動と世論、議会論戦が市を追い込んでいます。条例改定案が継続審議となり、全国一律の保険制度についても、わが党の追及で「必要な方には必要な経過措置を講じる」と答弁せざるを得なくなりました。議会と市民が力を合わせ、減免制度廃止案を撤回させましょう。