新型コロナウイルスの感染が再び拡大し、市民生活に不安が広がるなか、宇治市長選が11月29日告示されます(12月6日投票)。大型公共事業の推進や市民サービスを削減し、コロナ禍でも命より経済活動を優先する国、府の悪政に従う市政ではなく、市民の声に耳を傾け、暮らし応援の施策を優先する市政に変えるチャンスです。

消費税とコロナ「ダブルパンチ」

 現市政は、国が進めるインバウンド頼みの観光方針に沿って、このコロナ禍にも天ケ瀬ダム直下に富裕層向けのホテル建設計画を打ち出す一方、中学校給食の早期実現や市民サービスの充実、公民館廃止反対など、市民の願いに背を向けてきました。

 労組や市民団体でつくる「21宇治市民ネット」が、今秋取り組んだ市民アンケートには、「コロナ禍でパート求人減少。私立高校の授業料も払えるかわからない。必死です」(40代)、「天ケ瀬ダム直下にホテルはいらない。それよりPCR検査などにお金を使って」など、暮らしの窮状、市政への要望が2000通を超えて寄せられています。

 JR宇治駅の近くで喫茶店「風の館」を経営する女性(67)は、「生かさず、殺さず、このままでは中小零細業者は淘汰されるのでは」と不安を漏らします。開業から37年になり、バブル経済の崩壊、リーマンショックも乗り越えたが、昨年の消費税10%への増税に加えて、コロナの影響は大きな打撃です。

外国人観光客頼みはやめて

 感染予防対策で、換気扇や空気清浄機を新調。補助制度を利用したものの出費はかさみました。来店者数が減り、売り上げは、5月が昨年同月比で3分の1、観光客が増えた11月でも4割減の状態で、「先が見通せない」と言います。市政には、「外国人観光客頼みの開発事業ではなく、商売が続けられ地域経済を豊かにすることに知恵を絞ってほしい」と望みます。

 コロナの感染予防に苦心する保育関係者らは8月、○児童福祉施設に勤務するすべての職員に、PCR検査を公費で定期的に実施○3密を回避するために少人数の保育が行えるよう国の最低基準を上回る人的配置の実現―などを宇治市に要望しました。

命守る施策に首長の真価が

 市からの回答(10月)は、PCR検査について、「公費で定期的に実施する状況には至っていない」、配置基準は、「検討すべき課題が多い」とあり、申し入れた「宇治の保育政策を考える会」の武尾正信会長は、「独自に検査体制を強化している自治体もあり、“やらない”という回答は残念。子どもやエッセンシャルワーカー、住民の命を守る施策ができるか首長の真価が問われる」と言います。

 安倍政権時に決定した生活保護費減額の一環で、10月から食費や水光熱費など日常生活にあてられる生活扶助費の減額が強行されました。これに対し審査請求運動に取り組んでいる「宇治生活と健康を守る会」は、国や宇治市に要望書を提出し、生活保護や国保、介護、教育など、生活にかかわる分野の改善を申し入れています。

 生活保護利用世帯に関して、削減された夏季、年末の見舞金の復活や、補聴器への助成を求めても、市は「考えておりません」と冷たい態度です。同会の平本克行会長は、「菅首相が口にする、“自助”の強調はけしからんこと。せめて市は“公助”の役割を果たし、暮らしを支えてほしい」と話します。

 市長選挙には、市民の声で市政運営をすすめようと、広範な市民が力を合わせて立ち上げた「こんな宇治プロジェクト」(日本共産党も加わる「21宇治市民ネット」も賛同)の、ながさこ千春候補と、自民党主導の府政「オール与党」に推された新人候補が立候補を予定しています。

公民館廃止方針に矛盾が広がる

 自民党らの推薦を受ける候補は、山本・現市長も応援し、国と府との強固なパイプを強調しますが、現市政が国の旗振り通りに、公民館や集会所など公共施設の2割削減を進め、住民との矛盾が広がっています。

 公民館制度の廃止には、パブリックコメントに意見を寄せた人の9割が反対を表明。住民の声と運動で、市が計画した廃止スケジュール通りには進められない状況にあります。

 木幡公民館でサークル活動に参加する武智由紀子さんは、住民の自主的学習を支え、学習成果を地域に還元し、地域文化の振興に貢献している公民館の役割を強調。「人と人がつながり、コミュニティーの中心を担う重要な場です。廃止ではなく、日曜日の開館など充実を求めたい。公民館の維持・充実を公約に掲げる、ながさこさんに期待します」と話しています。