新・生存権裁判「京都でも『勝訴』の旗を」 大阪地裁で「減額処分取り消し」の画期的判決
京都訴訟は5月に結審“人間らしい生活勝ち取る”
国が2013年から生活保護費を引き下げたのは違憲として、その取り消しを求めて、大阪府内の生活保護利用者42人が国などを相手取った訴訟の判決が2月22日、大阪地裁であり、森鍵一(もりかぎ・はじめ)裁判長は減額処分は違法として、処分を取り消す判決を言い渡しました。京都地裁をはじめ全国29都道府県で原告約1000人が訴えている集団訴訟で、原告が勝訴したのは今回が初めて。専門家は「歴史的で、画期的な判決」と歓迎し、京都の原告らは「大阪に続こう」と決意を新たにします。
大阪地裁での勝訴を受け、原告団や弁護団、支援者らは2月27日、大阪市内で報告集会を開催。オンラインで、各地の原告とを結びました。
京都市内の会場には、「新・生存権裁判」として闘う府内の原告や支援者ら約20人が集まりました。生活保護バッシングの中、原告は勇気を振るい立ち上がり、司法を動かした――。喜びにあふれる参加者の顔、顔、顔…。会場のスクリーンに、大阪地裁前で「勝訴」の旗が掲げられた映像が映し出されると歓声と拍手が起こりました。
自民公約が削減の発端
保護費カットの発端は、2012年末の衆院選に当たり、自民党が「自立・自助」の名のもと「給付水準の原則10%カット」を公約に掲げたこと。自民党は選挙に勝利し、政権与党に復帰。同公約に沿う形で国は、生活保護費のうち衣食などをまかなう「生活扶助費」の基準額について、13年8月から、3年間で3回、平均6・5%、最大で10%、年間総額約670億円に上る戦後最大の引き下げを実行しました。
全国の裁判で、2例目となった大阪地裁の判決。同判決では、国が引き下げの名目とした、デフレで物価が下がったとする「デフレ調整」を問題視しました。原油や穀物の高騰で「特異な物価上昇」が起こった08年を起点としたことについて、「(物価)下落率が大きくなることは明らか」と述べました。さらに、生活保護の利用者が頻繁に購入することの少ない、テレビやパソコンなどの大幅な価格下落を反映した厚労省独自の物価指数を基に、国が改定率を定めたことに、「客観的統計や専門的知見との整合性がない」と指摘。昨年6月の名古屋地裁判決では、厚労相の裁量権を広く認め、訴えを退けたのに対し、大阪地裁では「判断の過程や手続きに過誤、欠落があり、裁量権を逸脱している」と断じました。
京都の原告57人は、大阪地裁の判決を力に勝ちたいと意気込みます。重度の障害を押して原告となった、京都市南区の共同作業所に通う小松満雄さん(59)、土田五朗さん(66)、山崎信一さん(57)はそろって訴えます。「コロナ禍のもと、全国の世論が司法を動かしている。勝利へ自信がついた」
森絹子さん(78)=山科区=も、同判決に「希望の光を見た」と言います。離婚して一人暮らし。中学校卒業後、仕事はしてきたものの、正社員として働いたのは25年間。退職後、年金だけでは足りず、68歳の時から生活保護を利用します。市営住宅の家賃を除き、保護費と年金と合わせ月約7万2000円でやりくりしなければなりません。食費や水光熱費を削り、パンクした自転車のタイヤの交換代5000円にも事欠く生活です。
「かつては、生活保護を利用するのは恥と思っていました」と言います。「長年働き、納税の義務も果たしてきたのに、みじめな思いのままでいいのか」。当事者以上に頑張る支援者に励まされ、原告となりました。「全国の仲間と一緒に、人間らしい文化的な生活を勝ち取りたい」と顔を輝かせます。
京都地裁では、5月25日に結審を迎え、訴訟は大詰めとなっています。原告・弁護士や支援者は、公正な裁判を求め、街頭や裁判所前で宣伝や署名運動を展開してきました。
前出の報告集会では、大阪の原告に続き、判決が言い渡される原告ら(札幌が3月、福岡が5月)が決意を表明。京都の会場では、原告団長の永井克己さん(83)=北区=が連帯のあいさつをしました。「京都でも必ず勝訴の旗を掲げたい」
京都新・生存権裁判を支援する会では、京都訴訟の公正な審理を求める京都地裁宛ての要請書への協力を訴えています。問い合わせ℡075・366・6137(京生連)。