「植物園は生きた博物館」「北山エリア整備計画は『第3次の危機』」松谷茂名誉園長が講演 「北山エリアの将来を考える会」講演会、計画見直し求め署名運動提起
「北山エリアの将来を考える会」は4月17日、京都市左京区の京都学・歴彩館で府立植物園元園長の松谷茂さんを招いた講演会を開き、植物園の歴史や魅力について考えあいました。府が昨年12月に策定した、府立植物園を含む北山エリア整備基本計画に対し、参加した元園長らが植物園のあり方を大きく変えるものだと警鐘を鳴らしました。
松谷さんは近く開園から100年を迎える府立植物園(1924年開園)の歴史や魅力について解説。大正時代に京都府が植物園を設置した当時の様子を紹介し、植物園の役割について「生きた植物の博物館であり、教育実践の場。とてつもなく大きな社会貢献を果たしています」と強調しました。戦後の1946年には米軍に植物園を接収され、樹木が2万6000本から6000本まで伐採されたことを「第1次の危機」とし、返還後には市民から「公園化することなく、純粋の植物園にせよ」という声が寄せられ、再開園した経過などを紹介しました。
2000年代初頭にはサッカー場建設計画も
そして02年頃に植物園の入園者数が下落し、03年に指定管理者制度が施行された頃について「サッカー場の建設計画が浮上するなど、『第2次の危機』を迎えました。その頃に私は園長として、『ホンマモンの植物で勝負するんや』と提起し、入園者数を増やすことができた」と解説しました。
現在、府が打ち出している北山エリア整備計画について、北山通り沿いのウバメガシの生け垣をセットバック(道路側を拡張)することや、植物園北西部のバックヤードの面積削減が懸念されていることなどをあげ、「『第3次の危機』ではないかと懸念している。府民、国民の財産である植物園の使命を無視するようなことがあってはならない」と同計画に警鐘を鳴らしました。
旭山動物園・小菅前園長「植物園の心臓部にさびた釘打つようなもの」
北海道の旭山動物園前園長・小菅正夫さんは、北山エリア計画について「植物園の心臓部にさびた釘を打ち込むようなもの。植物園と全く関係ない人が(イベントなどを)運営することを、設置者の知事がなぜ賛同するのか」と批判しました。
植物園の前園長の金子明雄さんは、生け垣をセットバックするなどし北山通り沿いに商業施設ができた場合、「100年、200年先を見た時に火災への不安がある。植物の展示を維持するためにもバックヤードは重要。今回の計画は見直してほしい」と述べました。
前副園長の西原昭二郎さんは、「植物園は日本の財産、宝です。バックヤードの面積を削るのは、清水寺の舞台の面積を削れというようなもの。計画は見直してほしいと訴えたい」と語りました。
「北山エリアの将来を考える会」からは、同計画の見直しを求める署名に取り組むことが呼びかけられました。