竹を切り整備した古道に立つ嶋本前区長(右端)ら地元住民

 京丹後市峰山町長岡地区の住民有志がこのほど、同地区にある室町時代の丹後国守護職・一色氏の砦だった長尾城の古道を復活させました。「郷土の歴史を伝え、散策路としても活用してもらいたい」と草木を刈って整備しました。今後も、歴史の発信や古道の維持に取り組みたいと意気込んでいます。

 長尾城は居住用の下城と見張りに使っていた上城からなります。現在でも下城跡では井戸の痕跡が見られるとともに、下・上城跡の近くには馬をつないでいた馬留の跡も残されています。

 城の創建は室町時代の1368年とされていますが、1927年の丹後大震災による資料の焼失などが影響し、はっきりとは分かっていません。一色氏は、織田信長の命を受けた明智光秀・細川藤孝(後の細川幽斎)らの侵攻を受け、1582年に滅亡。同年に長尾城も落城しました。

 古道は、下城から尾根伝いに高山(標高180㍍)山頂にある上城を結ぶ約2キロで、当時は馬が走っていたとも言い伝えられています。

 復活を提案した長岡地区前区長の嶋本茂男さんは、城跡付近の山はかつて子どもの遊び場で薪木採取も行われていましたが、これらも時代とともに無くなり、住民にも城の存在があまり知られなくなってきていると言い、「地元住民に郷土の歴史を伝えるとともに、散策路として憩いの場になればと思った」と話します。

 また、昨年度はコロナ禍で区の行事がのきなみ中止となるもと、「これなら、屋外で密を避けながらできる取り組みだと考えた」と振り返ります。

 復活にあたり、大型の樹木の伐採は森林組合に委託しましたが、一部は住民が協力して竹を切って草を刈るなどし、今年2月から3月の2カ月間で整備しました。

上城跡からの眺望も楽しめます
山頂の城跡は眺望も魅力的

 現区長の服部好孝さんは、「今後、散策路の案内板の数も増やしていきたい」と意欲を見せます。

 古道は、上城近くにつつじが群生しており、春先には花を咲かすなど散策路としての魅力も高く、上城からは北側の日本海も眺望できます。現在、上城には丸太でつくったベンチを設置しており、今後、東屋(あずまや)を整備する計画もあります。

 嶋本さんは、「初夏には新緑、秋には紅葉も楽しめます。コロナ禍ではありますが、緊急事態宣言が予定通り解除されれば、密を避けて多くの方に散策してもらえれば」と話しています。

 復活に携わった住民有志は、定期的な草刈りなど古道の維持や散策ガイドも行いたいと、今秋には「長尾古道を守る会」を結成する予定です。