【城陽市長選】浸水被害で住民「どこに逃げるの」 市西部に避難所なし、災害備えも「自助」強調/5日告示
「みんなの城陽」中野きょうこ候補 市全域に避難所再設置
5日告示、12日投票の城陽市長選は、「みんなの城陽」の中野きょうこさん(75)=新・無、日本共産党推薦=と現職の奥田敏晴氏(76)=自・公・国民・立憲推薦=の対決の様相です。災害の備えも「まずは自助」と公的責任を後退させる現市政から、住民の声を聞き市民の命を守る避難対策を確立する市政への転換が必要です。
浸水被害が起こった時、避難所がない──同市の防災マップ(洪水、土砂災害遍)には、市の西部地域、おおむね府道(旧24号)以西の地域が浸水に遭う「早期の立退き避難区域」が示されています。
同区域には避難所はゼロ。2018年に地域防災計画を改定し、河川氾濫時50㌢㍍以上の浸水(24時間以上継続)が想定される地域を含め、学校やコミュニティセンターの避難所指定を解除したためです。
市の北西部を流れる古川流域の市街地は、長年、浸水被害に悩まされてきた地域で、2012年8月の京都府南部豪雨では、500棟を超える浸水被害が発生。近年の異常な豪雨による災害を多くの住民が心配しています。
そんな中、梅雨を前に、集中豪雨や台風による洪水被害の備えと行動を周知した市の広報紙「じょうよう」6月15日付は、「小中学校やコミセンに行くことだけが避難ではありません」と述べ、「安全な地域に住む親戚・知人宅への避難が可能か、普段から相談」しておくよう「自助」を前面に促す内容で、不安と怒りを増幅させました。
3階を壊さず避難所にして
市北西部の古川地域では昨年、同地域にある北部コミュニティセンター(北公民館)の、耐震補強を含む改修工事の計画が持ち上がったことをきっかけに、住民有志で「住みたい古川地域をつくる会」を立ち上げ、水害時の避難所再配置の運動を広げています。
改修計画は、耐震補強の手法と、工事費が安価との理由で、既存の3階を減築して2階建てに変更。避難所として活用する考えはないとしています。
「会」では、身近な避難場所を増やすことやコミセンの3階部分を残して改修するなどを求めて市長宛の署名にも取り組み、同地域世帯の56%にあたる1357人分の署名が寄せられましたが、市は、「避難所はつくらない」の姿勢で、各自が災害に備え、地域の共助の意識を高めることが大切だとしています。
同地域の島元真理子さんは、3年前の台風の際は広報車でコミセンに避難所開設と案内していたと言い、「避難所がなければ、地域住民の共助も成り立たないのでは」と話します。
浸水区域に人口の4割
「早期の立退き避難区域」の人口は、約3万1500人(同「つくる会」調べ)。京都府の避難所等緊急実態調査報告(20年)では、洪水浸水に関する想定避難者数は約2万4400人とあり、市の人口(約7万7000人)の3~4割を占めます。
同「会」の西ますみさんは、「避難所の再設置の問題は、命の問題。中野さんを市長にしないと避難所はできない」と連日地域で訴えています。「市は大型道路や開発工事よりも、水害対策に真剣に取り組んでほしい」などと住民の共感を広げています。
「みんなの城陽」の中野きょうこ候補は、市全域で避難所再設置、3階建以上の避難場所を確保するほか、▽一人ひとりに寄り添って、全市民の避難方法を確立、盛土や河川の安全総点検の実施▽水害根絶へ古川の流域治水、河川整備促進─を掲げています。
■「東部丘陵地開発」生活道路整備後回しに
城陽市は、市の東部に位置する山砂利採取跡地、東部丘陵地(420㌶)の整備・開発計画を長年にわたって進めてきました。
国や京都府と一体になって進める巨大開発で、現市政は2012年に凍結が解除された新名神高速道路(大津~城陽間)が24年度に全線開通するのにあわせ、当地の西部の長池地域にアウトレットモール、東部の青谷地域に物流拠点の開発を計画。自治体の財政負担などが不明なまま進行しています。また、高速道路へのアクセス道路の整備、側道の4車線化などが、市民の生活道路の整備に優先して実施しています。 新たな焦点としては、開発工事が、砂や小石の砂礫層をコンクリートで固めて整備されることから、治水対策の課題が浮上。降雨量によっては下流域での内水氾濫を悪化させる危険性が指摘されています。
「みんなの城陽」の中野きょうこ候補は、盛土などの総点検を行い、東部丘陵地開発はいったん立ち止まって見直す、と表明していま