昨年の衆院選で東京12区から立候補した池内さおり元衆院議員 ©ML9

 今年7月15日に100歳を迎える日本共産党を取材したドキュメンタリー映画『百年と希望』が8日、京都みなみ会館(京都市南区)で公開されました。メガホンをとったのは安保法制の抗議活動をした青年組織「SEALDs」に密着した作品で知られる西原孝至監督(38)。西原監督に日本共産党との出会い、どこに希望を見出し、今後の何を期待するのかなどについて聞きました。

 

西原孝至監督

 作品は、党創立から歴史をひもとくことはせず、コロナ禍の下、東京オリンピック・パラリンクピック開催で揺れる2021年、99年目の日本共産党の姿に焦点を当てます。

 夏の東京都議選では、「ツーブロックの髪型禁止」という理不尽な高校の校則撤廃を求める議会質問が注目された池川友一議員を取材。夫婦別姓で、4児の父として弁当作りに励む姿もとらえます。

 秋の衆院選では、14年の初当選後、衆院議員としてジェンダー平等、性的マイノリティーの人たちの権利保障などに取り組む池内さおり元衆院議員にフォーカスを当て、政治家を志した生い立ちにも迫ります。

 政党助成金をもらわず事業収入が党財政の8割を占めることにも着目。政権批判のスクープを連続する「しんぶん赤旗」紙編集部の熱い議論、人間臭い編集過程にも密着します。

 また、若い頃から寝食を忘れて活動してきた古参党員、個性を生かして党の姿を伝えようと苦悩する若い国政候補や党職員らにカメラを向けます。

 自民党王国富山県に生まれ、長期自民党政権が当たり前と思っていたという西原監督。好きだった映画の歴史を学ぼうと2002年、早稲田大学入学。同時に映画の専門学校で、ドキュメンタリーを学び、同大学大学院を中退して映像制作会社に就職。「仕事に追われ、自分のことで精いっぱいだった」と言います。

 09年の民主党政権が誕生で政権交代の可能性を知り、11年の東日本大震災・東電福島第一原発事故で、日本社会が、簡単に崩れるもろい基盤の上に存在していること痛感。

 政治に関心を持つようになったのは安保法制が議論された15年から。国会前で抗議行動をする学生の映像をYouTubeで見つけたのがきっかけ。国会前に通い、のちに『わたしの自由について~SEALDs2015~』で作品化しました。

 海外の報道も熱心に目を通すようになり、権力を厳しく監視する海外メディアと、日本のメディアとの違いにがくぜんとしたといいます。

 日本共産党との出会いは、安保法制反対の集会。参加する同党議員らと顔なじみになり、立ち話で22年に100年を迎えることを知りました。活動には共感しながらも、支持が伸びないことへの疑問を解こう、と作品化を構想しました。

 20年、コロナ禍となり、ミニシアター支援の活動を始め、文化庁要請の際同席した党国会議員が、自分たちの気持ちを代弁してくれたことに頼もしさと親近感を感じ、作品の制作を決めました。

 「賞賛も、批判も踏まえた99年目の共産党を描きたい」との企画書を小池晃書記局長に提出。「外部の視点で批判も含めて作っていただけるのは新鮮でありがたい。自由にやってほしい」との言葉が返ってきました。

 『わたしの自由について』のカナダの映画祭で上映の際、参加者の多くが安倍政権の危険性については知らず、世界的な視野で日本の現状を伝える必要性を痛感した西原監督。

 世界的に、気候変動やジェンダー平等、格差拡大などの問題で、〝ジェネレーション・レフト(左翼的な世代)〟と呼ばれる若い世代が生まれるなか、最先端の動きを日本で機敏に受け止め、活動する最古参の政党・日本共産党を紹介したいと考えました。

 また、〝ジェネレーション・レフト〟が資本主義に限界を感じ、その先の社会を模索するなか、議会制民主主義に基づく変革を目指す、世界的にユニークな路線や政策も国内外の人々に知ってほしいと考えました。

 海外の若者にも見てもらおうと、ニューヨークに住み、今年のアカデミー賞作品賞・監督賞など4部門にノミネートされ、国際長編映画賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介監督のもとで通訳を務めた増渕愛子さんにプロデューサーを依頼し、アドバイスを受けました。現在、海外映画祭出品に向け、英語字幕を制作中です。

 「これまで弱者の声を聞き、政治を変えようと声を上げ続け、これからも声を上げる政党がいること、世界の新たな変化を察知し、活動している政党がいることが日本の希望。ジェンダー平等の問題などももっと押しすめ、路線や政策ももっとわかりやすく説明するなど、日本共産党自身もさらに国民に理解してもらえるよう変化してほしい。この作品が、世の中を変えたいと願う国内外の人々と、日本共産党を少しでもつなげる役割を果たせれば」

 9日(土)、監督の舞台あいさつあり(手話通訳付き)。