ホテル計画地前で話し合う「会」のメンバーら(京都市上京区)

京都の良さ、閑静な住環境壊す

 京都市上京区の相国寺の北隣で、本来ホテルが建てられない住居専用地域に進められようとしている高級ホテル計画について、市は11月14日、「上質宿泊施設」候補に選定しました。計画ストップを求めている住民らは「住環境悪化は必至」、「建築をするには特例許可が必要で、その手続きはこれから。運動を強めてストップを目指す」と意気込みます。

 計画地は相国寺の北隣で、一帯は閑静な住宅地。用途地域は「第2種中高層住居専用地域」のため、ホテル建築は不可区域です。土地を所有する三菱地所(本社・東京都)は、市の「上質宿泊施設誘致制度」の適用を受け、建築基準法に基づく特例許可を受けることを前提に、ホテル計画を進めています。

 計画では、ホテルは地上3階、地下1階。高さは規制の15メートルよりも12メートルに抑えたとするものの、延べ床面積約2万平方メートルの大規模施設です。1室の客室単価は1泊平均約10万円にするとし、世界各地で高級ホテルを運営する「ローズウッドホテルグループ」に運営を委託。工事は26年7月末に完了予定としています。

 市は、10月27日に開かれた有識者会議の意見・講評を受け、上質宿泊施設候補に選定。住環境や景観保全、周辺住民との合意形成などを評価したとしています。

 一方、周辺住民は「相国寺北ホテル建設計画を考える会」を発足し、計画の中止を求めており、怒りを募らせています。

 会では、計画の問題点などを知らせるビラやニュースをつくり、地域1000戸に3回の全戸配布を実施。学習会の開催など粘り強い運動を展開をしてきました。

「合意」程遠い再説明会要望

 共同代表の青笹哲夫さんは「市の言う『周辺住民との合意形成』などとは程遠く、説明会はアリバイづくりでしかなかった。住民は再説明会を求めているところだ」と訴えます。

「会」が全戸配布したビラやアンケート

 三菱地所は昨年12月から、個別訪問による計画の説明を実施。会の要求を受け、ようやく3月24、27の両日、計画地から100メートル以内の住民に限定した説明会を開催しました。参加者からは、なぜ都市計画の規制を無視するのか、住環境や景観の保全はどうなるのか、交通量はどれだけ増加しその対策は、などのさまざまな疑問や不安の声が続出しました。しかし、「業者からは『検討する』との答えしか返ってこなかった」と青笹さん。

 会では4月、説明会では住民合意が得られていないことを伝えるため、市に申し入れを実施。9月には、「広範囲の住民に開かれた再説明会を」求めるビラを地域に全戸配布したところでした。

 今後、市が特例許可をするには、建築審査会の同意が必要です。同じく共同代表の元栄隆仁さんは「計画はまだ認められてはいない。京都の良さ、歴史的環境を守るためにも運動を強めたい」と話しています。