編集委員を務めた(前列左から)東、三浦、森勝の各氏ら
A5判191㌻(カラー)。1800円+税
構想10年「体験者の声を記録に」

 丹後地方での平和運動、組合運動、原発誘致反対など戦後の住民運動史を当事者55人がつづった『丹後に生きる 命、くらし、平和を守る人々の記録』(かもがわ出版)がこのほど、出版されました。刊行は「丹後の新しい未来を求めて」編集委員会で、委員の東世津子さん(93)は、「戦争など激動の時代を生き抜いてきた人の生の声を失われる前に記録し、世に出したかった」と話しています。

 同書の構想は10年前、東さん、元小学校教諭の三浦郁子さん、松村満行さん(日本共産党丹後地区委員会元委員長)らで話し合ったことがきっかけです。東書店を営む東さんは、90年代に丹後の織物業の女性労働者を取材し、その実態を記録した「丹後のはた音」を出版しており、「歴史を語るには体験者の声が一番だ」と強く感じていました。

 同書は、組合活動、基地反対・平和運動、原発反対闘争、女性運動など、テーマごとに7つの章で構成。

 組合活動では、元小学校教諭で今年4月に亡くなった岡下宗男さんが、勤務評定反対闘争や奥丹教組の誕生など「平和と民主主義を守る教育の確立」を求める組合活動の歩みを記しています。

 丹後の伝統産業である織物業。実際の労働力として支えた女性労働者らが工賃引き上げなどを求めて立ち上がった丹後織物闘争(60年代)では、旧網野小学校で5000人が集会を開き、引き上げを勝ち取ったことが、集会の写真とともに掲載されています。

社会基盤成立の原点を知る

 旧久美浜町での原発建設計画は、無党派も含めた広範な立場の住民による反対運動で計画撤回へと追い込まれました。30年におよぶ運動の歩みを筒井由雄さんらが執筆しています。

 平和を願う取り組みでは、経ケ岬の米軍基地をめぐる運動など、現在も続く問題とともに戦争体験を掲載。21年1月に亡くなった東さんの夫、理代吉さん(日本共産党元丹後町議)は、戦争体験から平和と国民本位の政治の推進への決意を胸に生きてきたと記し、「いかなることがあっても戦前に戻ることのないように、みんなで力を合わせなければならない」と結んでいます。

 他にも同書を通じ、たんご協立診療所や丹後文化会館など現存する社会基盤の原点にあった住民運動を知ることができます。

 A5判191㌻(カラー)。1800円+税(送料別)。問い合わせ☎0772・75・0073(東書店)。