老舗ライブハウス「ふら~っとホーム」38年の歴史に幕 プロ奏者育ち、ジャズ文化発展にも貢献
プロピアニストのマスターらの伴奏で、ジャズをはじめ様々な音楽のセッションが楽しめる京都市中京区の老舗ライブハウス「ふら~っとホーム」が5月21日、惜しまれ、38年の歴史に幕を下ろしました。
四条大宮のビルの2階の同店にあるグランドピアノ、ギター、ウッドベース、エレキベース、ドラムで演奏が楽しめ、客の声の高さや好きなテンポに合わせ、マスターに歌の伴奏をしてもらえるのも魅力でした。
1985年2月、祇園で開店。気軽に音楽を楽しんでもらおうと店名が付けられました。88年12月、現在地に移転。プロ、アマ関係なく交流できる場として親しまれました。
近年、マスターの田久保等さん(76)が手に痛みを覚えるようになり、演奏に支障をきたしてきたことから閉店を決意しました。
今年初め、年賀状やSNSなどで事情を伝えると、名残惜しむミュージシャンらが次々と訪問しました。13日には、世界的なジャズギタリスト山口武さんが、「若い頃にマスターに世話になった」とプライベートで訪れ、マスターの十八番「スペイン」をはじめ、スタンダードナンバー約10曲を演奏し、マスターらとセッション。
5月5日には、同店で演奏してきた常連客によるライプも行われ、若い時に伴奏役を務め、その後プロになったベーシストの有福珍さん、ギタリストの湯田大道さんらも駆け付けました。
田久保さんは13歳の時父親が病死、母親も病弱だったため、預けられた施設「桃陽学園」(京都市伏見区)で友人がピアノを弾いていることに刺激され、ピアノに興味を持ちました。
当時、全盛期だったジャズバンドのバンドマンに憧れ上京。ビクター芸能に所属し、昼間は渡辺貞夫さんが主催するプロ養成の音楽学校に学び、夜は、銀座の高級クラブ「クラウン」のビックバンド、実力派歌手・しばたはつみさんのラテンジャズバンドなどでキャリアを積みました。
京都に戻り、ベラミチェーンのクラブで演奏し、ミュージックレストラン「エスパース ジロー」のバンドリーダーなどをした後、妻のゆかりさんと現在の店を始めました。娘の友妃(ゆうき)さんも、音楽に親しみ、のちにプロのバイオリン奏者になりました。
同店には、クラリネット奏者の北村英治さんや、サックス奏者の古谷充(たかし)さんら、プロ奏者も立ち寄り、マスターと共演したほか、有福さんや湯田さんのほか、学生時代に腕を磨き、ギブソン・ジャズギターコンテスト最優秀ギタリスト賞受賞に輝いたギタリスト・馬場孝喜さんら若手プロ奏者を輩出。ジャズ文化の発展に寄与しました。
等さんは「いつプロのミュージシャンが来ても対応できるように日々、練習をしてきましたが、このままでは対応が難しくなると思い閉めることにしました」と語り、妻のゆかりさんも「店をやってきたから、素敵な出会いをいただいた」と謝意を述べています。