講演する高垣氏(10月7日、亀岡市)
ARの展開イメージ 広島被爆の絵=作者 高蔵信子、小川サガミ、吉村吉助 所蔵:広島平和記念資料館 長崎原爆の絵=所蔵:長崎原爆資料館 長崎写真=撮影:山端庸介 政治家並びに科学者の記録写真=ウィキペディア・アコモンズより

11月の核兵器禁止条約会議でアピールへ

 米経済誌フォーブスの表紙などを飾り、アート作品を世界各地の展覧会で展示してきた写真家・塚田守さん(60)=京都市在住=は、11月にニューヨークの国連本部で開かれる核兵器禁止条約第2回締約国会議(11月27日~12月1日)に向け、被爆の実相を伝えるアプリを開発して国連前でアピールしようと、クラウドファンディングを呼びかけています。

 開発中のアプリは、フマートフォンやタブレットで開くと実際の風景に、画像や文字が重ねて表示されるAR(拡張現実)と呼ばれる技術を使ったもの。広島や長崎の被爆者が被爆時を思い出して書いた絵や、被爆直後の長崎の写真、核保有国指導者や開発に関わった科学者の顔写真と塚田さんの作品である核兵器がさく裂するイメージの映像が見る人の周囲360度を囲みます。

 指導者の顔をタップすると、その国の言葉で「核兵器を廃絶します」とフィクションの宣言が流れ、場面が転換。各国、各分野から集めた核兵器廃絶後の社会を想像した英文テキストが周囲に回り始めるという構想です。

 塚田さんは2021年に松本大学(長野県)や技術者と協力し、ARの技術を使って広島の被爆者の絵を浮かび上がらせるアプリを開発していますが、今回は、被爆の実相とともに核兵器の開発や維持に向けて政治家や科学者が果たしてきた歴史も紹介する内容にし、「締約国会議中、国連前でアプリをPRしたい」と意気込んでいます。

 9月にカナダの友人とクラウドファンディングを立ち上げ、資金を募集。目標は2万1800カナダ㌦(約240万円)。

 塚田さんは、高校を卒業後、米国留学をして写真について学びました。帰国後、青色発光ダイオードを開発してノーベル物理学賞を受賞した中村修二さんら日本の著名な科学者や経営者を撮影した写真が、フォーブスの表紙に掲載されました。

塚田さん

 2003年にアート作品の分野に転身。視覚障がい者の撮影をきっかけに、表面的には見えない、社会の裏側や深層心理などを抽象的に映し出す作品を制作し、イタリア、ドイツ、ポーランド、アメリカなどで展覧会に参加してきました。

 ドイツ・ベルリンに滞在中の2011年、福島第一原発事故が発生。アーティストとして何ができるかを思索し、ベルリンとケルンで原発についての展覧会を企画。福島の作家の作品も招待し、日本人、ドイツ人らのアーティストで展覧会を開催しました。「核」の恐ろしさを痛感し、写真を通じて広島・長崎の被爆の実相を伝え、核兵器廃絶に向けた取り組みをするようになりました。

 「核兵器が存在していることが『現実』で、その『現実』から抜け出すのは困難だと思っている人が多くいます。しかし、愚かな現実の枠組みを離れ、核兵器のない社会を想像してみることが大事です。私がコンピューター技術を使って芸術の持つ想像する力で人類史上最強の破壊力を有する核兵器に対抗することで、ポスト核兵器時代の想像を提起し、またそれを分かち合うことで、新たな現実を創り出す小さな一歩となればと思います」

 問い合わせ☏090・3874・6915(塚田)。クラウドファンディング(英文)=https://gofund.me/a244807c