面白い〈時代劇〉できました 映画『侍タイムスリッパ―』12月2日に京都文化博物館で特別上映
『ごはん』安田淳一監督作、自主制作ながら東映京撮スタッフが全面協力
稲作に焦点を当てた『ごはん』の監督、安田淳一さん(56)=城陽市在住=が、初の時代劇となる『侍タイムスリッパー』をこのほど制作。来月開催の京都まちなか映画祭(12月1日~10日、京都文化博物館など)で特別上映されます。
江戸幕府から京都守護職に任じられた松平容保のもと京都の治安にあたる会津藩士らと、倒幕を狙う長州藩士らが激しく争う幕末の京都。会津藩下級藩士・高坂新左衛門は、夜陰にまぎれて長州藩士に斬りかかろうとすると、落雷で気を失います。
目を覚ますと、江戸らしき町並み。現代の撮影所にタイムスリップしていたのです。時代劇の撮影現場に乱入して監督から叱られ困惑。行きかう得体のしれない乗り物、高い建物や光る町並みなどを見て未来に来たと悟ります。無力感に襲われますが、気遣ってくれる撮影所の助監督・山本優子に支えられ、斬られ役として再スタート。精進の末、大役が舞い込みます。そこにはある秘密が…。
新左衛門役は、京都精華大学出身で、映画『母 小林多喜二の母の物語』や、NHKの大河ドラマ、「水戸黄門」などに出演し、今回初主役の山口馬木也。助監督役は、『ごはん』の主役・沙倉ゆうの。
このほか、時代劇ファンに人気を誇る冨家ノリマサ、東映剣会OBの峰蘭太郎、東映剣会の現役俳優、ベテランの福田善晴、紅壱子、多賀勝一ら、自主制作と思えない豪華な顔ぶれが並びます。
ユニークな企画とともにクリアな映像やリアリティーあふれる効果音など時代劇の新境地を切り開こうとする意欲作です。
山口らの迫真の演技により、事態が分からず真剣にやるほど空回りしたり、周囲から武士になりきる熱心な役者と見られたりするなど笑いの要素にあふれる一方、命がけで守ろうとした幕府はなく、変わり果てたことへの元藩士の悲哀と、時代劇が衰退していくことへの映画人の哀愁とが重なって涙を誘い、チャップリンの映画を見ているような感動を覚えます。
17年に企画を立案。19年に書き上げると青ざめたといいます。通常なら多大な予算が必要となる内容だったからです。スポンサーも見つかりませんでした。
自家用車を売り、貯金もはたき、補助金も申請し、捨て身覚悟で制作に臨みました。東映京都撮影所に脚本を提示して制作協力を打診すると、「自主制作の映画はわしらいつも止めるんやけど、この脚本を読んでなんとかしたいという気になったわ」と全面的に協力してくれました。
コロナ禍の20年7月にクランクイン。資金が集まり次第、少しずつ撮影し、同年12月、クランクアップ。今年10月の京都国際映画祭で特別上映されました。エンドロールで割れるような拍手が起こりました。「タイムスリップものとしても、時代劇としても、映画作り映画としても完璧で面白い」、「日本の時代劇って素晴らしい。笑いあり涙あり素敵な作品。世界中の人に観て欲しい」など、称賛のコメントが寄せられました。
安田監督は「子どもから、お年寄りの方まで楽しめる面白い作品に仕上がりました。是非見ていただきたい」と話しています。
京都国際映画祭では一般公開用(2時間19分)でしたが、今回の映画祭では、カットシーンも含むデラックス版(2時間27分)を上映します。
2日午後4時、京都文化博物館フィルムシアター。特別料金=一般1500円、大学生1400円、高校生・博物館友の会・障害者手帳1000円。なお、3日午後4時半、同会場で『ごはん』最新版の上映あり。同料金。京都文化博物館☎075・222・0888。
【訂正】当初記事では、料金の記載を「一般500円、大学生400円、高校生以下無料」としていましたが、これはフィルムシアターの通常料金で、今作は特別料金となっています(2023年11月29日追記)