「被害者 責めてませんか。」――電車内や駅構内での性犯罪撲滅を願い、啓発ポスター作りに取り組む京都女子大学(京都市東山区・竹安栄子学長)の学生が、新作ポスターを完成させました。12月21日、同大学内で記者会見を開き、「性暴力に遭うのは被害者の責任」という社会の認識を改めるきっかけになればと、制作の意図や経過について発表しました。

 ポスターは、第三者へのアプローチを重視。4台のスマホを配し、第三者の無自覚な発言が被害者への2次的被害となることの問題提起と、被害者を助ける第三者になることを促すメッセージを集約。「痴漢・盗撮は深刻な性暴力」の言葉は前回のものを踏襲しました。

 「痴漢 見かけたら」の枠にQRコードを掲載し、痴漢について考えるQ&A、被害者、加害者それぞれの相談窓口の案内、制作の思いなど、情報や資料を提供しています。前回、開発した、携帯電話の画面に「だいじょうぶですか 声をかけましょうか?」のメッセージを表示し、被害者の支援につなげるデータ「かいにゅうさん」も再掲しています。

 このポスター作りは、被害者に自衛を求める従来のポスターではなく、「加害を防ぐポスター」に視点を変え、21年から始めた第3弾。初回は京都府警と阪急電車、2回目(22年)は京阪電鉄、今回は京都市交通局とのコラボで、市営地下鉄烏丸、東西両線の全31駅の構内、電車内のつり広告で掲示されます。

 制作した学生は13人で、前年に関わった学生の呼びかけに、ジェンダー平等など社会課題に関心のある学生が学部を超えて参加。10月以降、ポスター制作、ホームページ作成、広報の3グループに分かれて取り組みました。

 制作メンバーの一人、武田梨瑚さん(法学部)は、大阪で開かれた音楽イベント(8月)で、DJが性暴力被害に遭い、告発したら服装などを理由にSNSで2次被害を受けた事件がポスター制作企画に参加するきっかけになったと述べ、「被害者に責任があるとする日本の風潮を変えたいとの思いを実行できる機会になった」と発言。

  “痴漢も客だから”と交通機関での被害を軽く受け止める状況があったことに悔しい思いをしていたという別の学生は、学びを(ポスター制作という)行動に移せる機会になったと話し、「ポスター掲示が『誰かの平和のため』になれば」と語りました。

 会見には、竹安学長、ポスター制作の契機をつくった市川ひろみ法学部教授ら教授陣と京都市交通局職員が参加。竹安学長は、同大学の教育目標「ジェンダー平等の推進に貢献する女性人材の養成」をあげ、「女性自身が声を上げ行動することが実現のカギ。このプロジェクトの遂行自体がジェンダー平等につながる」と激励しました。