宇治市教委が、廃止を含め今後のあり方を検討している公民館をめぐって、市民や利用者らが1月20日、同市内で市民のつどいを開き、「宇治市の5公民館の存続と充実を求める連絡会」を結成しました。松村淳子市長と木上晴之教育長宛に、▽公民館の存続と充実▽宇治公民館の再建▽利用者、市民の声を聞いて進めること—を求める要望書の提出を確認しました。

 宇治市は、5つある公民館のうち、宇治公民館(宇治橋西詰の北方)の閉館を強行し、公民館条例の廃止に向けて検討しています。

 この日のつどいは、「公民館廃止に反対する会」「宇治公民館の建て替えを求める市民の会」「日常生活の向上を考える会」などが準備し、市内全体で一緒に運動を進めようと開いたものです。

 木幡公民館の社会教育指導員だった竹尾美智子さんが、公民館の果たしている役割について語り、宇治自治体問題研究所の藤井功代表が、「公民館のあり方と市民運動」と題して講演しました。

 藤井氏は、公民館を廃止し、名称を変えて新たな教育施設をつくろうとする市教委の提案ついて、「名称変更だけではなく、公民館の施設の目的、性格を変えることを意味し、行政が社会教育を投げ捨てるもの」と解説。公民館廃止の目的は、公共施設の削減と「行政改革」の名のもとでのコスト削減にあると指摘しました。

 さらに、戦後、社会教育法で社会教育施設として位置付けられた歴史にふれて、公民館は社会教育活動や地域文化、まちづくりの拠点であり、貸し館ではないことを強調。憲法26条の「教育を受ける権利」を保障する上でも、公民館廃止はこの権利の侵害にあたると述べました。

 参加者からも、宇治公民館がなくなって以降の利用者の実情や公民館存続の願い、市の姿勢を批判する意見などが出されました。

 ■公民館とは 「単なる貸し施設」ではなく住民の地域活動、社会教育の拠点/廃止提案に反対意見相次ぐ

 公民館は、社会教育法(1949年制定)に基づき、住民の教養の向上、健康の増進、情操の純化を図り、生活文化の振興、社会福祉の増進に寄与することを目的とする教育施設で、設置者は市町村です。

 その目的の達成のため、定期講座の開設、講習会、展示会、レクリエーシヨン等に関する集会の開催などの事業を実施。設置する場合は、市町村が条例で設置及び管理に関する事項を定めなければならないとあります。 

 宇治市では、1952年に公民館条例を制定し、「中央」「宇治」「木幡」「小倉」「広野」の5館を設置(1995年)。2018年に宇治が閉館(施設解体)されましたが、現在も5館体制とされています。

 宇治市のホームページには、「公民館は、地域住民が気軽に集まって、暮らしをとりまくいろいろな問題について話し合い、その解決に向かって学習し、地域や暮らしをよくしていく活動を活発にしていくための社会教育施設です」と説明。公民館は、▽社会教育(生涯学習)を目的とした教育・学習の場▽宇治市教育委員会に属する教育施設▽使用料は無料とあり、「単なる貸し施設ではありません」と明記されています。

 同市では、宇治公民館の閉館を境に、公民館の今後のあり方の検討を開始。「社会教育」の場から「生涯教育」の場へ変化しているとして、施設の複合化や民間施設の活用を視野に、運営方法や仕組みを見直す議論が進められてきました。19、20年に、公民館を廃止し新たな教育施設をつくる案が3回提案されましたが、市民から反対意見が相次ぎました。