シールド工法で陥没事故→補強工事で住宅50戸立ち退き 住民「終の棲家奪われた」 東京都調布市、外環道地下トンネル工事で
衆院選(27日投票)の争点となっている北陸新幹線延伸計画で、京都市市街地の巨大地下トンネル計画(シールドマシンでの掘削)に不安の声が広がっています。同様の工事により、住宅街で陥没事故が起こった東京都調布市では、地盤補強工事のために約50戸の住宅が立ち退きを迫られています。
閑静な住宅街から家消えた
「閑静な住宅街から家が消えています。私たちの終の棲家(ついのすみか)が奪われた」と話すのは、陥没地近くに住む丸山重威さん(83)。45年間住んだ自宅を事業者に売却することを決めたといいます。
東日本高速道路(NEXCO東日本)が進める東京外かく環状道路(外環道)の地下トンネル工事により、2020年10月、調布市の住宅街の道路で、長さ5㍍、幅3㍍、深さ5㍍にわたる陥没事故が発生。現在、陥没地周辺の住宅は取り壊され、フェンスに囲まれた一帯では大規模な地盤補強などの工事音が鳴り響いています。
周辺住民によると、事業者側が立ち退きを求めて買い取りや一時移転などを打診し、直上の30戸と、周辺の20戸の計約50戸が対象となっています。
対象地域外の近隣住民が不安を感じ、移住を望んでも、事業者が家の買い取りに応じないケースや、自宅の土地の価格が下落することを懸念する住民もいるといいます。
丸山さんによると、移住先で体調を崩し、亡くなった高齢者も複数いるとし、「トンネル工事の影響で、住民の命が奪われ、生活が壊されている。調布だけでなく、全国で市街地の地下トンネルが計画されています。京都でも同じことを繰り返してはなりません」と訴えます。
工事業者が住民を監視
また、今年3月には、大手ゼネコンの鹿島建設を幹事社とする共同事業体(JV)関係者が地域住民を監視し、盗撮していたことが「しんぶん赤旗」の調査で判明しました。鹿島JV関係者らは、工事に反対する住民の行動を逐一、グループチャットで共有。住民の氏名や接触したマスコミの社名とともに、「娘様が、お二階に」「家の中では薄着」などと住民の自宅内の様子も投稿・共有していました。事業者側は謝罪する一方で、「プライバシー侵害にはあたらない」などと開き直っています。
地元住民らは、陥没事故が起こる以前の17年12月、外環道の事業認可中止と大深度地下使用は無効だとする訴訟を東京地裁で起こし、たたかっています。そして陥没事故後に工事差し止めの仮処分を申し立て、22年2月には東京地方裁判所が中止を命じ、陥没地直下の掘削は止まっています。
住民らは、工事中に起こった振動や騒音、低周波音による被害の実態を告発。シールドマシン掘削時に使用する起泡剤が原因である「酸欠」気泡が周辺の川で確認されており、人間が吸えば即死となる危険性があるとし、工事中止を求めています。
その他にも、東京都や神奈川県などではリニア中央新幹線計画工事中止を求める訴訟など、複数の住民団体が立ち上がり、裁判などでたたかっています。
外環道訴訟に参加している、元トンネル技術者の大塚正幸さんは、調布市の陥没事故は砂れき質の地盤で、シールドマシンが土砂を取り込みすぎて起こったものだと指摘。京都の地盤について、「調布と同様の砂れき質で、陥没などの事故が起こる危険性はある。大手ゼネコンや国は、多大な予算をかけ、各地で地下トンネル計画を進めています。こうした計画を中止するとともに、地下トンネル計画にお墨付きを与えている、大深度地下使用法を廃止すべき」と強調します。
日本共産党が大深度地下使用法廃止法案提出
日本共産党国会議員団は10月3日、「大深度地下使用法」の廃止法案を参院に提出しました。同法は、地下40㍍以深の「大深度」地下空間は「通常使用しない空間」「地上に影響をおよぼす可能性は低い」などとし、地権者の同意も補償もないままトンネル工事を行うもの。2000年の国会で日本共産党以外の賛成で成立しました。外環道や北陸新幹線延伸計画でも同法のもとで建設計画を進めています。
廃止法案では、▽すでに大深度工事が進んでいても事業者は地上地権者の同意を得なければならず、その間の工事は中断すること▽損失は適正に補償する▽大規模地下開発による災害発生の防止措置─などを盛り込んでいます。